研究課題/領域番号 |
17K19311
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
宮本 英揮 佐賀大学, 農学部, 准教授 (10423584)
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研究分担者 |
中村 真也 琉球大学, 農学部, 教授 (30336359)
石川 洋平 有明工業高等専門学校, 創造工学科, 准教授 (50435476)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 宇宙線中性子 / COSMOS / 土壌水分 |
研究実績の概要 |
我が国では,豪雨と連動した斜面崩壊が多発し,土壌雨量指数に基づく現行の土砂災害警戒情報を補間し得る新たな斜面崩壊予測技術を開発するとともに,レジリエント(被害を最小限に留め,災害から早く立ち直る強靭さ)な地域減災システムを構築することが望まれている。 本研究では,国内外で脚光を浴びる宇宙線土壌水分観測システム(COSMOS)を核とした革新的な斜面崩壊予測システムの開発と実用化を目指して,①同システムの実用化の障害になる技術的課題の解決,②熊本地震(平成28年4月)で崩壊した火山灰土斜面への適用,③気象観測データと連動した効果的なシステム運用法の順に,2ケ年計画で段階的に研究を推進する。 平成29年度は,上述の①および②に着手し,後述する成果を得た。 第1に,熊本地震による土砂災害現場(熊本県南阿蘇村)の火山灰土急斜面に設置済みのCOSMOSに,webカメラを搭載したフィールドルーターを併設し,COSMOSによる従来の高速中性子データに加え,画像データに基づく地上植物体内の水分量の変動量を約半年間分取得した。平成30年度に稼働予定の土壌水分センサネットワークの観測データを待って,被覆植生を考慮した斜面土壌水分評価モデルを構築することが今後の課題である。 第2に,代表者の研究グループは,大気環境,土壌環境,地下水環境,揺れ・位置変動等の観測技術を統合した新たなIoTシステムを構築した。2018年2月より,同システムを佐賀大学農学部圃場において試験的に運用し,システムの安定性および電力供給能力の検証や,ファームウェアの不具合の修正等に取り組んでいる最中である。地元自治体からの設置許可を得た後,平成30年5月に急斜面に設置予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COSMOSによる斜面観測は,予定どおりに進行している。一方,IoTシステムの開発については,本種目の採択結果が7月に通知された後に着手したため,4月着手を想定した当初の予定より,3ヵ月ほど遅延しているものの,システム一式の最終テストの段階にあり,平成30年5月には現場に設置できる見通しであるため,概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年5月に,前年度に開発したIoTシステムを急斜面に併設し,COSMOSおよび土壌水分センサネットワークを活用して,梅雨・台風・短期集中豪雨などの気象イベントを含む1年間の点および面の土壌水分量を観測し,気象庁データに基づく土壌雨量指数との差異を比較検討することにより,土壌雨量指数を活用することの是非や本法の技術的優位性を明らかにする。また,COSMOSの実測値に基づく斜面危険度のリアルタイム予測技術を構築し,その仕組みをクラウドに組み込むことにより,従来の土砂災害警戒情報を補い得る地域減災システムとしての利用法を検討するとともに,自治体および地域住民にその情報を提供することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
以下の2つの理由により,平成29年度に実施予定だったIoTシステムの構築に要する物品費および設置にかかる旅費を,平成30年度に繰り越して当初予定分と合算して執行する必要が生じた。 (1)観測現場は,複数の地権者から構成される牧野組合の管理下にあり,毎年2月に開催される会合において審議される野焼きのスケジュールに合わせて,観測機器の設置・撤去等を行う必要がある。熊本地震発生以後,観測現場は地割れが拡大する危険な状態にあるため,平成29年度の野焼きは中止されていたが,平成30年度に実施されるか否かについては2月まで未定だった。よって,中止が確定した2月以降に,改めて自治体と設置計画を審議して設置許可を得た後,設置計画に基づくIoTシステムの構築作業を行なわざるを得なかったため,一部の物品の調達を平成30年度に行う必要が生じた。 (2)本課題が採択された7月以降にIoTシステム開発に着手したため,4月に着手するとした当初の計画に比べ,全体的な開発スケジュールが約3ヵ月程度遅延したため,観測機器の設置作業を平成30年度に行なわざるを得なくなり,その旅費を繰り越す必要が生じた。
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