本研究では、情報伝達物質の候補気体を植物に曝露することで、この植物の“立ち聞き”機能を積極的に利用し、防御物質として生産される香気成分や機能性成分の代謝系を活性化させることを目指す。最終年度の成果は以下のとおりである。 オシメンを曝露してレタス、ワサビナ、ミズナおよびサラダナを水耕栽培した。ミズナの含有成分である1-ブテン-4-イソチオシアネートの相対値、ワサビナの含有成分である1-ブテン-4-イソチオシアネートの相対値およびアリルイソチオシアネートの濃度(mg/g)において、4処理区で有意差はなかった。4植物の成長量についても処理区間で明確な差はなかった。 サリチル酸メチルを曝露して、スイートバジルを育てた結果、地上部生体重、植物高、葉枚数、地下部乾物重に、処理区間で有意差はなかった(p>0.05)。根長および地上部乾物重は、中濃度区で対照区あるいは低濃度区と比べ有意に小さくなった(p<0.05)。処理区ごとの、スイートバジルの主要含有成分であるオイゲノール、ユーカリプトールの濃度(mg/g)、メチルオイゲノールおよびエストラゴールの相対値は、4処理区間で有意差はなかった。ユーカリプトールを除く3種では、植物個体によって生産されない物質があるため、検出された個体数は、3~7と大きな差異があった。生産する個体間でも含有量に大きな差異があるため、標準偏差は大きくなった。高濃度区で、オイゲノール、エストラゴール、およびメチルオイゲノールの含有量が低い傾向にあったが、有意差は見られなかった(p>0.05)。 今後は、曝露濃度の範囲を広げppmレベルの濃度で実験を行うとともに、2つのケモタイプを分別して、実験に用いることができないか検討する必要がある。
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