研究課題/領域番号 |
17K19317
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
武内 ゆかり 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (10240730)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 行動学 / 気質 / 注意散漫 / SNP / GWAS / 犬 / 使役犬 |
研究実績の概要 |
本研究には日本盲導犬協会で飼育された盲導犬候補個体のうち,ラブラドールレトリバー種を用いた。訓練開始3ヶ月目に実施した訓練士評価より,身体的要因でキャリアチェンジした個体や訓練士による評価率が低い個体などを除外し,最終的に766頭における19評価項目を用いて因子分析を行なった結果,“注意散漫”,“感受性”,“落ち着き”という3気質因子が抽出されたものの,注意散漫因子に含まれる項目が先行研究と異なっていた。よって,以降は先行研究において抽出された因子を注意散漫(旧),本研究により抽出された因子を注意散漫(新)として解析することとした。 続いて全頭における注意散漫スコアの分布を調べ,注意散漫(旧)および(新)ともにスコアが高い個体をHH,低い個体をLLとし,また注意散漫(旧)もしくは(新)のどちらかでスコアが高い個体をH,低い個体をLとし,HHLL群及びHL群を合わせて198頭を選抜した。これらの個体についてShort Tandem Repeat検査法にて個体間の遺伝的距離を計測し,提供されていた血縁情報とともに考慮することで,最終的にGWAS対象個体として92頭を選抜した。 遺伝子型タイピングは理研ジェネシスに委託した(Illumina,Canine Whole-Genome Genotyping BeadChip使用)。その結果,いずれの個体もSNPタイピング率が99%以上であった。SNPマーカーのうち,タイピング率が99%以下のSNPとMinor Allele Frequencyが0.01以下のSNPは解析から除外し,92頭の124,930SNPを用いて,線形混合モデルによる関連解析を行った。HH/H群(44頭)とLL/L群(48頭)間で解析したところ,残念ながら有意水準を超えるSNPは存在しなかったものの,関連の可能性が疑われるSNPがいくつかみつかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究自体は遅延なく進んでいるが,現時点では結果が有意ではないことから,「おおむね順調に進展している」と評価した。本研究結果を受けて,今後の推進方策を検討することとした。
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今後の研究の推進方策 |
当初より予測されたことではあったが,日本盲導犬協会における盲導犬候補個体コロニーでは,個体間の遺伝的距離がかなり近いために,GWAS候補個体の選抜が難航した。実際に有意な結果が得られなかったことから,今後は“注意散漫”に加えて,“感受性”,“落ち着き”気質に関してもGWASを実施することとする。 また,個体間の遺伝的距離が近いことを逆に利用して,同腹個体で“注意散漫”の高低が存在するペアをGWAS候補個体として抽出して解析することも検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究が科研費として採択される前より研究を開始しており,「1次GWAS費用」は他の経費より捻出していたため,当該年度の使用額が減ることとなった。 この「前年度未使用額」については,「2次GWAS費用」もしくは,有意な結果が得られた際に関連がより強い感受性多型を探索するための「ターゲット領域シーケンス費用」として使用する予定である。
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