昨年度のデータが思わしくなかったため,本年度はいちから解析方法を見直すこととした。 まずは,適切な気質モデルを構築することを目的として、763個体を供試し、訓練士による気質評価情報をもとに気質の再抽出を行った。その結果,探索的グラフィック解析で得られた気質のうち“感受性”を除いた“注意散漫”と“順従さ”で構成される新たな気質因子モデルが最も適合していると判断された。この新たな“注意散漫”スコアと,これまでに遺伝子型タイピングが終了している215個体のデータを用いてGWASを実施した。 GEMMA(https://www.xzlab.org/software.html)(Zhou & Stephens 2012)による線形混合モデル解析を実施したところ,36番染色体上に存在する一塩基多型(SNP)が最もP値の低いSNPであり、有意(p値=2.50×10-8)に“注意散漫”スコアと関連することが明らかとなった。なお,QQプロットを確認したところ,層化の指標ともなるλは1.03であり,本結果は擬陽性ではないと判断された。本研究結果の再現性を検討すべく,GWASで使用した個体215頭を除いた集団より,1胎より1個体,かつ可能な限り“注意散漫”スコアが高い個体と低い個体を20頭ずつ,計40頭を供試して追試験を行ったところ,有意差は認められなかったものの、GWAS群と同じように高い群は低い群に比べてAアレルの頻度が高くなっていた(p値=0.77)。本追試験ではマイナーアレルのホモ(GG)個体が存在しなかったため,今後,例数を追加して解析を継続することとした。
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