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2017 年度 実施状況報告書

受精後の新世代における遺伝子発現プログラムの実態とその調節機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 17K19318
研究機関東京大学

研究代表者

青木 不学  東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (20175160)

研究期間 (年度) 2017-06-30 – 2019-03-31
キーワード遺伝子発現プログラム / 初期胚 / zygotic gene activation
研究実績の概要

本研究では、受精後の遺伝子発現プログラムの実態、更にはその調節機構を明らかにすることを目的として、次の研究計画を立案した。まず、プログラムを規定する要素として、(1)発生イベント、(2)Zygotic Clock、(3)段階的変化、の3つを想定し、これらを抑制することで遺伝子発現パターンがどのように変化するのかをRNAシーケンスで解析する。次いで、その変化の様相を解析することで、遺伝子発現プログラムの全貌解明へのマイルストーンとする。
平成29年度においては、まず蓋然性は高いがこれまでその可能性を示す研究結果が報告されていない、(3)段階的変化について調べた。すなわち、1細胞期から2細胞初期まで一過的にRNA polymerase IIの可逆的阻害剤である5, 6-dichloro-1-β-D-ribofuranosyl-benzimidazole (DRB)で処理し、受精後の最初に起こる遺伝子の活性化、minor zygotic gene activation (minor ZGA)を抑制する実験を行った。この間、minor ZGAは抑制されるが、発生後の時間は経過し((2)zygotic clockは進行)、また母性mRNAの調節による発生も進行する((1)発生イベントも進行)。したがって、この実験は純粋に遺伝子発現プログラムが「(3)段階的変化」によるものであるかを調べるために有効なものであると言える。その結果、DRBを含む培地からこれを含まない培地に戻された2細胞期胚は転写を開始したが、本来minor ZGAに続くmajor ZGAが見られる2細胞後期において、minor ZGAが起こることが明らかとなった。この結果により、遺伝子発現プログラムの開始時期においては、minor ZGAからmajor ZGAへと段階的に遺伝子発現を変化させていくことが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度の計画は、研究実績の項で記したように、遺伝子発現プログラムの実態、およびその調節機構を明らかにするものである。特に、スタート時の遺伝子発現プログラムについて明らかにすることはその後のプログラムの流れを解析・理解していくうえで必須のものと考えられる。しかし、実際には、これまでプログラムのスタートであるminor ZGAで発現する遺伝子を同定できておらず、そこから次のmajor ZGAへとつながるプログラムの調節に関してはまったく研究することができない状況であった。しかし、近年、minor ZGAで発現する遺伝子(および遺伝子間領域)が明らかにされたことで、本研究の解析が可能となった。そこで、まずminor ZGAを一過的に抑制することで、段階的にプログラムが調節されているかどうかについての検証を行った。その結果、発生時期てきにも、また受精後の発生時間的にも、本来major ZGAが起こっている時期にminor ZGAが起こるということが分かり、少なくとも遺伝子発現プログラムの開始時期においては、minor ZGAからmajor ZGAへと段階的に遺伝子発現を変化させていくことが明らかとなった。この結果は、遺伝子発現プログラムのスタート時における調節機構について得られた初めての知見であり、また、着床前初期発生期を通じても段階的遺伝子発現調節が示された初めての例となる。
以上、本研究プロジェクトは、ここまでの結果で十分な進展があったものと考えられる。

今後の研究の推進方策

前年度までに、遺伝子発現プログラムのスタート時には、minor ZGAからmajor ZGAへと段階を追ってプログラムが進行することが示された。しかしこの結果は、major ZGAが起こるためにはまずminor ZGAが必要であるということ(必要条件)を示したものであり、発生イベントあるいはzygotic clockが関わっていないということを示すものではない。そこで、minor ZGAからmajor ZGAへの切り替わりにこれらの陰唇が関与しているかどうかを明らかにする。具体的には以下の実験を試みる。
(1)発生イベント
DNA polymeraseの阻害剤であるaphidicolin及びM期促進因子の阻害剤であるroscovitineを1、2細胞期に作用させ、その後の遺伝子発現の経時的変化をRNAシーケンスにより調べる。
(2)Zygotic Clock
1細胞期胚にM期促進因子の構成要素であるcyclin BのsiRNAを顕微注入し発生の進行を止めて、その後の遺伝子発現の経時的変化をRNAシーケンスにより調べる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2017 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [国際共同研究] University of California(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      University of California
  • [雑誌論文] Regulation of zygotic gene activation by chromatin structure and epigenetic factors2017

    • 著者名/発表者名
      FUNAYA Satoshi、AOKI Fugaku
    • 雑誌名

      Journal of Reproduction and Development

      巻: 63 ページ: 359~363

    • DOI

      10.1262/jrd.2017-058

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 1細胞期胚の雌雄前核におけるヒストンH3変異体の非対称的局在について.2017

    • 著者名/発表者名
      青木不学
    • 学会等名
      第40回分子生物学会年会
    • 招待講演

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公開日: 2018-12-17   更新日: 2022-02-21  

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