昨年度に引き続きロシア西部(ロシア連邦・タタルスタン共和国)で飼育されるミンクから得られたトキソプラズマDNAのタイピングをすすめた。組織中の虫体数が少ないため、従来の手法によるタイピングは困難であったが、B1遺伝子のタイピングが成功し欧州由来株と同じあるいは極めて近縁であることが明らかになった。シングルコピーの遺伝子座についてPCRについても、トキソプラズマゲノムを選択的に増幅してからPCRに供するなどの新たな手法を導入することで、増幅高率の大幅な改善がみられた。これは本研究の推進に役立つのみならず、野生動物等から微量の感染英微生物病原体DNAを検出することが要求されるフィールド調査に広く応用できる成果である。さらに都市主変のげっ歯類について、血清学的調査にくわえてトキソプラズマDNAの検出を行った。これらの結果を総合的に判断したところ、ロシア西部において、トキソプラズマが都市から離れた森林地帯に既にかなりの頻度で定着していることが明らかになった。日本で分離された強毒株についてはNGSによる解析を進め、これまでに病原性に関与していると知られている遺伝子内部に意味のある変異がないことが分かった。一方で従来報告されている株と比べて、特定の遺伝子のコピー数が異なっていることが明らかになった。とくに、病原性に関わっていることが知られている遺伝子座において既知の株とコピー数が異なっており、このようなゲノムの特徴が非定型的な病原性に関与している可能性がある。これらの知見の一部について国際誌に論文として公表した。
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