子宮で発現が認められている分泌性タンパク質の遺伝子発現を採取した子宮腺上皮および子宮内腔上皮細胞での各発情周期での発現とゲル包埋培養またはシャーレ―状培養したウシ子宮腺上皮細胞について検討した。子宮腺でのみ発現が確認しているものとしてSERPINA14およびMEP1Bを子宮腺及び内腔上皮細胞の両者で発現が認められているものとしてARSA、CTGF、APOA1、SPP1、LTFを選択した。LTF、CTGFを除く遺伝子においてステージ3および4での遺伝子発現は他のステージよりも有意に高かった。一方LTFは子宮腺および内腔上皮両者においてステージ3、4での遺伝子の発現はほぼ見られなかったCTGFはステージ2では低値であったもののそのほかのステージではそれに比べて有意に高い発現を維持していた。子宮腺上皮細胞はマトリゲル内で速やかにシストを形成し、その後内腔に液を貯留する。培養開始後7日目にサンプルを回収して分析に供した。検討した遺伝子のすべてにおいてシャーレ―上培養の方がゲル包埋培養よりも発現量が有意に増加した。また培養においてエストラジオールおよびプロジェステロンの遺伝子発現に及ぼす影響についても検討した。エストラジオール添加において発現量が低下した遺伝子はSERPIN14A、MEP1B、ARSA、APOA1、LTFであった。CTGFおよびSPP1はエストラジオール存在下でその発現は有意に増加し、プロジェステロンの供添加によってさらに発現は増加した。LTFにおいては両ホルモンの存在はその遺伝子発現を著しく低下させた。以上の結果から、本課題で検討したゲル包埋による子宮腺培養法は一般的なプラスティックディッシュ上での平面培養よりも分泌性タンパク質遺伝子発現の見地から、体内での状態をより正確に表現できる培養系であることが示された。
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