研究課題
近年,Ⅰ型アレルギーであるイヌアレルギーの患者数が急増している。我々は,IgE抗体との結合親和性を低下させた低アレルゲン化ワクチンを開発し,重篤な副作用であるアナフィラキシーを引き起こすことなく,アレルゲン免疫療法によりアレルギー反応を寛容化に導くことを目指している。本研究では,同定されている7種のイヌアレルゲンの中で,最もアレルゲン活性が高いCanis familiaris allergen 1(Can f 1)を研究に用いた。当該年度は,これまで構造が不明であったCan f 1の構造をX線結晶構造解析により世界で初めて決定した。Can f 1結晶は,sitting drop蒸気拡散法を使用して単結晶を得た。結晶化には,20 mg/mLに調整したCan f 1 C118A溶液(20 mM Tris-HCl,pH 7.4)を用いた。結晶化母液として0.1 M imidazole (pH6.5), 30% PEG3350, 6% isopropanol, 0.1 M CaCl2を用いた。得られた結晶を用いてSPring-8のBL26B1においてX線回折イメージを収集し,分解能2.5Åまでのデータを用いてXDSによる指数付け,マージおよびスケーリングを行った。また,Can f 1と56%の相同性をもつヒトtear lipocalinをサーチモデルとした分子置換法により初期位相を求めた。さらに,プログラムRefmacとPhenix Refineを用いた結晶学的構造の精密化とCOOTによるマニュアルでの精密化を繰り返して構造を決定した。得られた構造からCan f 1は,リポカリンファミリーに保存された立体構造,すなわち8本の逆平行βストランドからなるβバレル構造を骨格とし,各βストランドをつなぐフレキシブルなループと1本のαヘリックスを有していることが明らかとなった。
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