研究課題/領域番号 |
17K19332
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
加藤 容子 近畿大学, 農学部, 教授 (40278742)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 初期化 / クローン / 人工染色体 |
研究実績の概要 |
本研究では、体細胞核移植において利用可能なユニバーサルなレシピエント卵細胞質を構築することを最終目的として実施する。種を超えて体細胞核を初期化するレシピエント卵細胞質を作り出すことができれば、同種間核移植である優良家畜の育種・増産へ応用でき、さらに、同種間での体細胞核移植が困難で異種間核移植が必要な希少動物種の再生・複製に大きく貢献する。卵細胞質が持つ体細胞核の初期化機構と全能性誘導機構は、エピジェネティクスの修正ん関与が大きな鍵となっていることは明らかであるが、全体像についてはほとんど解明されていない。そのため、本研究により、種を超えて体細胞核を初期化させる卵子特有の初期化過程や、また、種による差異を知ることができれば、卵細胞質が持つ初期化機構の全体像を知る一端になると考えられる。さらに、研究の過程で得られる知見により、ヒトの不妊治療で必要な生殖補助医療技術や多能性幹細胞を用いた再生医療などの医療分野へも応用できる。すなわち、老化卵子を蘇らせる手法開発(初期化強化)や能力の高いiPS細胞を作出したり、iPS細胞の作出効率を向上させる手法へも応用できると考えられる。平成29年度の計画は、未受精卵由来と体細胞由来のミトコンドリアを操作して、ヘテロプラズミー状態を作り出す手法開発と生存性の検討、また、初期化関連因子を組み込んだ人工染色体ベクターを構築することである。これまでのところ、細胞の生存性をできる限り損なわずにミトコンドリア量を制御するいくつかの薬剤処理を検討しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は体細胞核移植に適した培養細胞株の作出、体細胞核移植実験系の構築に終始し、当初計画の卵子由来ミトコンドリアを持つ体細胞株の作出あるいは体細胞由来のミトコンドリアを持つ卵子を作出し、生存性を損ねない条件を確定するまでには至らなかった。また、初期化関連因子を含む人工染色体ベクターの構築を委託するに至っていない。これらのことから、当初予定より若干遅れていると判断するが、体細胞実験系は構築でき、核移植に用いる培養体細胞株も作出できたことから、本年度にペースアップして当初予定に追いつくことができると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度実施予定で遂行が遅れている項目を早期に完了する。すなわち、未受精卵由来と体細胞由来のミトコンドリアを操作して、ヘテロプラズミー状態を作り出す手法開発と作り出した卵子あるいは細胞の生存性を検討する。それらを用いた核移植を実施し、核移植卵の体外生存性を検討する。また、年度前期中に初期化関連因子を組み込んだ人工染色体ベクターを構築する。微小核細胞融合(MMCT:microcell mediated chromosome transfer)法を卵子に適用する予備的実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に予定していた人工染色体の委託を行わなかったため、平成30年度に繰り越した。平成30年度の前期早めに委託を行う予定である。
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