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2017 年度 実施状況報告書

新生子性腺に存在する未発育生殖細胞を用いた体外生産胚の作出システムの開発

研究課題

研究課題/領域番号 17K19333
研究機関国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構

研究代表者

金子 浩之  国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, ユニット長 (60343993)

研究分担者 菊地 和弘  国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 主席研究員 (20360456)
岩元 正樹  プライムテック株式会社(先進技術開発チーム), 先進技術開発チーム, チーム長 (20500101)
研究期間 (年度) 2017-06-30 – 2019-03-31
キーワード原始卵胞卵 / 精祖細胞 / 異種間移植 / 核移植 / 胚発生
研究実績の概要

幼若期の豚性腺には、雄の最も未発育な生殖細胞である精祖細胞、および雌の最も未発育な生殖細胞である原始卵胞卵が存在しているが、個体へと発生する能力は有していない。このような未発育な生殖細胞を長期保存した後、人為的に発育させて初期胚を作製することができれば、生殖活動期にない幼若豚からも遺伝情報を保存し、さらに胚移植によって個体の生産が可能となる。本研究においては、幼若卵巣および超低温保存した幼若精巣から、異種間移植、核移植および顕微授精を組み合わせて、初期胚を発生させる新手法を開発することを目的とする。今年度の実績は以下のとおりである。
1)豚体内発育卵を用いた核移植: 幼若期の未発育生殖細胞を用いる前に、豚体内で発育した卵および精子を用いて核移植の条件を検討した。と場で収集した豚卵巣から卵を採取し、卵核胞期(GV期)または体外成熟培養後の第二減数分裂中期(MⅡ期)で核または中期核板を、それぞれ除去した。それらの卵の細胞質に、別のGV期またはMⅡ期の卵から採取した核または中期核板をそれぞれ注入し、GV期またはMⅡ期の再構築卵を作製し、体外成熟・体外受精を行った。その結果、GV期の核移植では、核が大きいために顕微操作によって卵が破壊され生存率が著しく低下した。一方、MⅡ期の再構築卵は生存し体外受精後に初期胚に到達することが明らかとなった(胚発生率5%)。
2)幼若期の未発育卵を用いた核移植: 1)の結果に基づきMⅡ期の核移植を実施した。まず、原始卵胞のみを含む幼若豚卵巣をヌードマウスの腎皮膜下に移植した。ヌードマウスから発育した豚卵(直径115μm以上)を採取し体外成熟培養によってMⅡ期に成熟させた。次いで、これらの卵の中期核板を、と場卵巣から採取し中期核板を除いた卵の細胞質に注入した後、体外受精を行った。その結果、50%の再構築卵で受精が成立したことが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

豚卵を用いた核移植の知見は無いため、まず、豚体内で発育した卵を用いて、核移植の実施適期を検討した。その結果、第二減数分裂中期(MⅡ期)で核移植を行うと再構築卵の生存率が高く、さらに体外受精後に初期胚へと到達し得ることが明らかとなった。その知見を基に、幼若豚卵巣由来で人為的に発育させた卵の核移植をMⅡ期で行った結果、50%の再構築卵で受精が成立することが明らかとなった。受精率および胚発生率を向上させるために核移植手法の微細な調整は必要ではあるが、MⅡ期に豚卵の核移植を行うことで初期胚を得られる可能性を提示できたことから、概ね当初の研究計画を達成したものと判断される。

今後の研究の推進方策

豚体内で発育した生殖細胞を用いた核移植による初期胚発生系、および人為的に発育させた豚の幼若期生殖細胞を用いた核移植による初期胚発生系の開発を目指す。
1)豚体内発育生殖細胞を用いた核移植による胚発生: 引き続きMⅡ期卵を用いた核移植を実施し、再構築卵の胚発生能の解析を行う。
2)幼若期の未発育卵と精祖細胞を用いた核移植による胚発生: まず、原始卵胞のみを含む幼若豚卵巣をヌードマウスの腎皮膜下に移植し人為的に発育させた豚卵を採取する。体外成熟後に採取卵の中期核板を、と場卵巣から採取し中期核板を除いた卵の細胞質に注入し(MⅡ期再構築卵)、体外受精を行い初期胚への発生率および胚の品質を調べる。次のステップとして、予め超低温保存した幼若豚精巣をヌードマウスの皮下に移植し人為的に精祖細胞から精子を発生させる。この豚精子を、人為的に発育させた豚発育卵から作製したMⅡ期再構築卵に顕微注入し、受精の成立の有無および初期胚への発生能を解析する。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた理由は、試薬等の消耗品が当初計画より安価に購入できたためである。残額はヌードマウスの購入経費にあてる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Establishment of a strain of haemophilia-A pigs by xenografting of foetal testicular tissue from neonatally moribund cloned pigs2017

    • 著者名/発表者名
      Kaneko Hiroyuki、Kikuchi Kazuhiro、Nakai Michiko、Fuchimoto Daiichiro、Suzuki Shunichi、Sembon Shoichiro、Noguchi Junko、Onishi Akira
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 7 ページ: -

    • DOI

      10.1038/s41598-017-17017-6

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Recent progress on pig genetic resources: Cryopreservation and utilization of gonadal tissues2017

    • 著者名/発表者名
      Kikuchi Kazuhiro, Kaneko Hiroyuki
    • 学会等名
      日本畜産学会・日本家禽学会合同公開国際シンポジウム
    • 国際学会
  • [学会発表] Recent progress on cryopreservation and utilization of testicular tissues for pig reproduction2017

    • 著者名/発表者名
      Kikuchi Kazuhiro, Kaneko Hiroyuki
    • 学会等名
      4th Fatty Pig International Conference
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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