平成29年度 - DNA合成中にリボヌクレオチドを高頻度に取り込む変異をPOLE1とPOLD1遺伝子(Polε,Polδのカタリティック因子ををコードする遺伝子)に導入した細胞株を樹立した.POLE1に関しては相同染色体の両遺伝子座,POLD1遺伝子座には一方の遺伝子座にのみ導入が行われた.その後,ゲノムDNA上でのrNMPの除去を抑制するために,siRNAを使用したノックダウンにより,ゲノムDNA中のリボヌクレオチドを除去する酵素であるRNaseH2の不活化を試みたが,その効率は十分ではなかった.よって,薬剤により標的となるタンパク質の分解誘導を行う方法(AIDタンパク質分解法;Nishimura et al. Nat Methods 6 917-22 2009)を応用し,細胞内でRNaseH2の迅速な分解を誘導する系を上記のポリメラーゼの変異体に導入した. 平成30年度 - 平成29年度に樹立した細胞からゲノムDNAを回収後,アルカリ処理によりrNTP部位での切断を誘導した.DNA鎖中のrNMP取り込みの有無を処理後の断片化の程度を電気泳動で確認し,その断片を回収した.このDNA断片から次世代シークエンサー解析用にライブラリDNAを作成し,配列解析を行った結果,両遺伝子座に変異度導入が行われたPolεに関してだけであるが,全ゲノム網羅して,DNAポリメラーゼの合成ファイルを得ることができた.
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