研究課題
転写反応は、生物の基本的な反応の1つですが、その詳細は未だ明らかではありません。本研究では、分子機構の理解のために、1塩基の転写過程の可視化を目指しています。このためには、基質として数十μMの蛍光標識ヌクレオチド存在下での観察が必要ですので、高濃度蛍光基質の可視化が可能なナノ開口(zero-mode waveguides)という手法を改良し、直径50 nmのナノ開口基板作製法の確立を目指しています。我々は、これまでに、電子線描画装置を用いて、直径約100 nm のナノ開口基板作製手法を確立し、Holliday 構造DNA 結合タンパク質であるRuvB タンパク質とDNA の相互作用の解析を行ってきましたが、1枚1枚を手作りで行っていたために、ナノ開口基板の製造効率、均一性や再現性に難がありました。本研究では、石英ウェハを用いた半導体プロセスを用いる事で、均一なチップを大量に作製する手法を確立しました。また、計測のバラつきには、チップの均一性以外の問題点もあります。これは、従来、ナノ開口基板の底に分子を固定化する際、(位置制御することなく)、固定化していたので、必ずしもナノ開口の中心部に固定化されないという問題点です。このため、基板を形成する遮蔽金属(アルミニウム)の傍に固定され、蛍光色素が金属と相互作用し、増強/消光現象によって、観察シグナル強度がナノ開口の孔ごとにバラつく原因となっていました。そこで我々は、ナノメートル精度で分子を固定化でき、2次元・3次元のナノ構造物を自在に作成可能な、DNAオリガミ技術に着目し、転写系をDNAオリガミ上に固相化した転写ナノチップを構築しました。活性評価を行った所、十分な活性を有する事が明らかになったことから、今後、作製したナノ開口基板と組合わせる事で、リアルタイムな転写反応の可視化と分子機構解明が期待されます。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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