研究実績の概要 |
これまで、m6Aメチル化RNAではDNAプローブの結合効率に若干差があることが報告されているが、その差が僅かであることから実用的ではなかった(Golovina et al, NAR, 2014)。そこで申請者は、この結合効率の差を広げる方策を練り、プローブ中のDNAの一部を人工核酸BNAに置き換えると (BNAプローブ)、結合効率の差が大きく拡大することを予備的に見いだした。このため、BNAプローブを一旦RNAに結合させ後に温度を上げ、RNAからプローブが50%解離する融解温度を測定すれば、この温度から任意の部位におけるRNAメチル化効率の定量が可能になるのではないかと着想し、実験を開始した。昨年度までに、合成短鎖メチル化RNAを用いたm6Aメチル化効率定量法を確立し、BNAプローブの融解温度を測定し、その温度から予測されるメチル化効率が、既知の割合と一致することを確認した。次に、本手法が、大腸菌rRNAにも適応できることを確認した。特に高速液体クロマトグラフ質量分析法 (LC/MS法)を用いたメチル化効率の定量結果と一致していることも検証できた。その後、本年度に入って、特にmRNAなどの発現量の少ないRNAへの適応を目指した。感度の問題から、これを上げるためにRNA側の濃度を上げる、mRNAだけに濃縮する、プローブのデザインを変えるなどの改良を行ったが、最終的に高い定量性をもって測定することは困難との結論に至った。こういった手法の限界点も含めて、2年間の結果をまとめて論文として報告した (Oshima et al, ChemCom, 2018)。
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