研究課題/領域番号 |
17K19355
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
伊藤 隆司 九州大学, 医学研究院, 教授 (90201326)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | Cas9 / Cpf1 / centromere |
研究実績の概要 |
真核生物の染色体が機能するには、複製起点・セントロメア・テロメアの3種類の特異的配列が必要である。各配列の役割は、それぞれ複製開始・染色体分配・末端保護に必要なタンパク質群をそこにリクルートすることに他ならない。であるならば、任意の塩基配列を上記タンパク質群のリクルートメントシグナルとして読み換えることができれば、3種類の特異的配列を欠いたDNA分子であっても染色体として振る舞うことが可能な筈である。この仮説を実証するために、本研究は、CRISPR/Cas9のシステムを利用して、出芽酵母をモデルに複製起点とセントロメアの特異的配列を欠いた環状人工染色体の構築に挑戦する。その実現によって、新しい染色体概念を明確化すると同時に、任意のDNA分子をベクターやホスト染色体との組み換えなしにそっくりそのままの形でクローニングする全く新しい遺伝子ゲノム操作の概念を実証することを目指す。
本年度は、セントロメア配列なしの染色体分配-セントロメアの便乗(Piggybacking)のためのプラスミドの構築を行った。顕微鏡による検出を容易にするために、栄養要求性マーカーのみならず、tetOをマルチコピーで持たせたプラスミドを構築した。これと平行してここで利用するCpf1の変異体dCpf1に検討を加えた。我々がこれまでに研究に活用してきた出芽酵母CUP1遺伝子座のdCpf1による視覚化を試みたところ、1種類のsgRNAでのみ成功が認められた。これまでにdCpf1の視覚化における成功例の報告はなくこれが最初の例となった。しかしながら、これらの事実はdCpf1がdCas9に比較すると標的部位を認識する上で効率が低いという可能性が示唆している。プラスミドのテザリングについてもdCpf1による試みは成功しなかった。以上の結果を踏まえて、当初計画したCpf1ではなくてsaCas9の利用の検討に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
dCas9に比較して成功率が低いという点において、dCpf1の利用が予想外に難航している。
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今後の研究の推進方策 |
Cpf1についての検討を続行すると同時にspCas9とオルソゴナルな系としてsaCas9の利用も検討する。また、原理検証という意味では必ずしもCRISPRに拘る必要はないので、適宜、TALEの利用も検討することとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画において重要な位置を占めていたdCpf1の使用において予想外の困難に遭遇した。そのため、原因追及や計画の再検討に時間を要し、研究の進行が遅れて次年度使用額が生じた。この問題の解決および回避のための方策は検討されており、次年度においてその目的に使用する計画である。
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