本研究は、細胞分裂時の遺伝的フィデリティを保証するメカニズムを、染色体の力学特性に着眼して解明することを目的とした。染色体に生じる数的・構造的異常は、細胞のがん化と関連する重要な形質である。これら異常の多くが染色体に作用する力と関係すると考えられているが、力が染色体の構造と機能にいかなる影響を及ぼすかについての定量的知見は乏しかった。そこで、分裂期染色体の標的部位に力を与えてその影響を解析できる顕微鏡システムを開発し、染色体が持つ構造力学特性を蛍光可視化解析した。その結果、動原体(染色体上の重要な力点構造)が持つ弾性的で柔軟な変形特性と、より遠位の部位が持つ堅牢な性質を示す結果を得た。
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