細菌は、ヒトにおいて身近な生物である。ヒトは約100兆個の細菌と共生しており、この細菌叢バランス(種類と細菌数)が、ヒトの健康に大きく影響することが知られている。これらの細菌叢の解析はこれまでにも多々行われてきたが、本研究では、最終的に細菌叢のコントロールを目指したチャレンジを提案した。我々は、細菌の種類を同定するためによく使われている遺伝子(16S rRNA)の配列をもとに一塩基の違いで細菌を同定すると同時に、細菌の数を一細胞レベルで定量する、これまでにない細菌叢解析法を開発している。本研究では、この技術を用いて細菌叢コントロールというゴールへ向けた一歩を踏み出す。そのためにまず、時間によって変化する各細菌の増減を定量し、細菌叢バランスがどのように変化するのかを解明する。最終的に、細菌叢バランスに強く影響を与える“マスター”となる細菌を同定し、その影響を定量的に解析し、細菌叢ネットワークを解明する。 今年度は、昨年度に改良・計画したサンプリング法を実施し、腸内から安定して少量のサンプルを採取することに成功した。採取したサンプルを用い、腸内の複数部分の細菌叢について、目的遺伝子の配列を決定・定量した。既存の解析法に加え、新しい手法に対応する解析法を検討・実施した。現在、異なる部分の相違に加え、マウス間の相違についても興味深い結果が得られており、細菌叢のネットワークを理解する手がかりが得られていると考えている。
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