研究実績の概要 |
ミニマムゲノム細菌とは、細菌のゲノムを極限まで縮小させ、必須遺伝子(ノックアウトすると生存できなくなる遺伝子)もしくは準必須遺伝子(ノックアウトすると生育が極めて悪くなる遺伝子)のみを持たせた細菌のことであり、マイコプラズマという小さな細菌を元にして作成され報告された。本研究は、このミニマムゲノム細菌における細胞内共生現象に端を発し、この細胞内共生の性状およびメカニズムを解明することを目的とする。また、細胞内共生現象は初期生命の進化過程において頻繁に起こっていたであろうと推測され、加えてミニマムゲノム細菌と初期生命とはいくつかの類似した性質があるという視点から、ミニマムゲノム細菌を初期生命のモデル細胞として提案し、ゲノム縮小により進化をさかのぼった解析が可能であることを提案する。 本年度は、ミニマムゲノム細菌において複数種類の蛍光タンパク質を発現させたのち、細胞の詳細な観察を行った。その結果、mCherry, Venus, Ceruleanなどが強く光ることが確認でき、また1つの蛍光タンパク質を発現して光っている巨大細胞の中に、別の蛍光タンパク質を持った細胞が入り、かつ光っている様子が観察された。小さな細胞はブラウン運動している様子が観察された。また共焦点レーザー顕微鏡により、3次元立体像の観察を行った。加えて、多点タイムラプス観察を行い、細胞の状態を定常的に観察することを試みた。蛍光タンパク質を発現したミニマムゲノム細菌は、光っていない細胞と比べると観察が容易であり、細胞の形状等を詳細に観察することができた。
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