植物の窒素を巡る競争と植物の個体間相互作用との関係を調べる目的で、本年度は、国内の各地(北海道、東北地方および近畿地方)から採取してきたオオバコ(Palntago asiatica)を用いて、同じ環境条件下で種子を作成した。具体的には、滅菌した種子をシャーレで発芽させたのち、ポットに移植し、人工気象器を用いて栽培した。繁殖期に到達した個体について、花をプラスチックの筒で覆うことにより任意の交雑が起こらないようにした。その上で、同じ個体群内でのみ交配するグループや、他の地域の個体群との間で人工的に交配するグループができるように操作し、種子を得ることができた。 さらに、窒素を巡る競争実験に用いる土壌の準備も行った。オオバコの種子を採取したそれぞれの調査地において、オオバコが生息する複数の場所の土壌(オオバコの根が主に分布する表層0-10㎝の有機物層)を採取してきたものを、地域ごとに混ぜて、各地域(北海道、東北地方および近畿地方)の調査地の土壌サンプルとした。これらの土壌サンプルを2㎜の篩を用いて均質化した。この際、細根や小石などは目視で発見してピンセットで取り除いた。このようにして得られた土壌サンプルに、あらかじめ含まれている無機態の窒素量を測定した。 当初の計画では、ここまでが1年目の作業内容であったが、順調に種子が得られたため、翌年度の予定の実験を開始した。上記の方法を用いて均質化した各地域の土壌サンプルをそれぞれポットに入れ、上記のように得た種子を播種した。同時に発芽した2個体だけを残して他の実生を除去し、競争実験を開始した。今後、窒素吸収速度を測定し、植物の個体間相互作用との関係を明らかにしていく予定である。
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