植物間の個体間相互作用が土壌の窒素獲得競争に及ぼす影響を調べる目的で、一年目に人工的な交配によって得たオオバコ(Palntago asiatica)の種子を材料として、競争実験を行い、植物および土壌の窒素動態を測定した。 一年目に開始した競争実験の各ポットのオオバコ(各ポットに2個体ずつ植栽)の栽培を引き続き行った。栽培中、2週間おきに個体間の葉の重なりを計測した。栽培完了後、植物および土壌を採取した。植物体は根が切れないように丁寧に土壌を取り除いて洗浄し、植物は地上部と地下部に分けて、葉面積、根長、生重量および乾燥重量などを測定した。また、各ポット内の土壌は根についていた分も含めてすべてよく混ぜて均質化した後、窒素動態の測定に用いた。また、当初の計画では窒素について無機態の現存量、純無機化速度および微生物に保持される量を計測する予定だったが、一年目に実験を前倒しして開始することができたため、土壌中のリンの動態(無機態の現存量および無機化速度)についても分析をすることができた。 その結果、個体の成長への隣接する個体の有意な影響が検出され、これは先行研究と一致していた。一方、先行研究では地上部での影響を検出していたのに対し、本研究では地上部への影響は検出されなかった一方で、地下部へ配分に違いが見られた。さらに、土壌中の窒素動態への植物間相互作用の影響を調べた所、微生物に保持される窒素量は隣接する植物の組み合わせで有意に異なっていたことから、土壌中の窒素を巡る微生物との競争への植物間相互作用の影響があることが示唆された。一方、アンモニア態窒素や硝酸態窒素など無機態窒素の現存量や生成速度には植物間の相互作用の有意な影響は検出されなかった。さらに、本研究ではリンの動態も測定し、植物間の相互作用の影響を検出した。これらのことから、植物の相互作用が土壌中の養分動態に影響することを示唆した。
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