研究課題/領域番号 |
17K19372
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大隅 典子 東北大学, 医学系研究科, 教授 (00220343)
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研究分担者 |
木村 龍一 東北大学, 医学系研究科, 助教 (00781759)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 性比 / 精子形成 / Pax6 |
研究実績の概要 |
ヒトの男/女比は人種に関わらず、およそ 1.05 とされている。この合目的的な説明として、「男児でより高い乳幼児死亡率を補償する機構の存在」が仮想されているが、性染色体として X およびY 染色体を有する男性の生殖細胞系列から、減数分裂によりX 染色体を有する X 精子と、Y 染色体を有する Y 精子が産生される割合は、理論的には1:1である。もし若干でも男児が生まれる確率が高いのであれば、何らかの生物学的メカニズムにより性比が調節されていると考えられる。 本研究では、幹細胞制御因子Pax6 変異雄マウスの精子を体外受精(IVF)により野生型の卵子に受精させて得られた仔マウスでは、雄が多く雌が少ないという性比バイアスが生じることに着目し、Pax6による雄性生殖細胞の増殖・分化制御機構を明らかにすることを通じて、精子形成を介した仔の性比調節機構の一端を解明することに挑戦する。 Pax6は精子形成の過程において精母細胞に発現し、X染色体とY染色体が部分的に対合して形成されるXY体と呼ばれる構造物への局在が観察された。そこで、Pax6の機能不全によりX精子とY精子が産生される割合が影響される可能の検討を開始した。そのために、X染色体上の遺伝子Plp1およびY染色体上の遺伝子Eif2s3yをクローニングし、精子から抽出したゲノムDNA中におけるX染色体とY染色体のコピー数を定量する手法を開発している。また、精原細胞特異的にCreリコンビナーゼを発現するVasa-CreマウスとPax6 floxedマウスを交配させ、雄性生殖細胞特異的にPax6を欠損したマウスの作出を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
雄性生殖細胞特異的にPax6を欠損したマウスの作出効率が当初の見込みよりも低く、解析に十分なサンプルが得られなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
飼育環境および交配条件を検討することによりマウスの作出効率を改善し、雄性生殖細胞特異的にPax6を欠損したマウスにおける精子形成を解析する。また、精子形成過程におけるPax6の欠損が産仔の性比に及ぼす影響を解析する。 Pax6の機能不全とIVFが相乗的に性比に影響する可能性を検討するために、IVFにより作出した胚の発生について雌雄ごとに解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に予定していた雄性生殖細胞特異的にPax6を欠損したマウスの解析を平成30年度に行うこととしたため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、平成30年度の助成金と合わせて組織学的実験・IVF・精子運動能評価の実験のための消耗品費として使用する計画である。
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