研究課題
本研究では、精子形成過程における幹細胞制御因子Pax6の機能により仔の性比が調節される可能性について検討を行った。Pax6の発現は精原細胞に確認されたことから、精巣におけるPlzf陽性細胞数を計測したが、Pax6 -/+マウスの精原細胞数は野生型の同腹仔と同等であった。減数分裂の過程においてPax6は一過的に性染色体へ局在することから、Pax6の機能不全が減数分裂完了後の性染色体の割合に及ぼす影響について解析した。本研究ではX染色体とY染色体を蛍光in situハイブリダイゼーションにより検出し、円形精子細胞における性染色体の割合を解析した。野生型マウスの精巣では円形精子細胞のX:Yの比は1:1.06とY染色体の割合がやや多く、ヒトの女:男の比が人種に関わらず、およそ1:1.05とされていることとほぼ一致していた。これに対し、Pax6 -/+マウスの精巣では円形精子細胞のX:Yの比は1:1.44であり、Y染色体の割合が有意に増加していた。アポトーシスマーカーである活性型Caspase3の発現は野生型と同等であったことから、Pax6の機能不全によりどのように性染色体の割合が変化しているかについては今後の検討課題とした。本研究ではPax6 -/+マウスの解析を進めることと並行し、精巣特異的なPax6遺伝子ノックアウトマウスの作出を試みた。精原細胞特異的にCreリコンビナーゼを発現するVasa-CreマウスとPax6-floxedマウスを交配させ、雄性生殖細胞特異的にPax6遺伝子を欠損したマウスの作出を試みたが、Creリコンビナーゼの異所的発現が確認されたことから当初の研究計画の変更を余儀なくされた。現在、精原細胞特異的にCreリコンビナーゼを発現する別の系統であるStra8-Creの導入が完了し、雄性生殖細胞特異的にPax6を欠損したマウスの作出を再開している。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 7件)
Adv. Exp. Med. Biol.
巻: 1012 ページ: 75-81
10.1242/dev.164160.
Cell Reports
巻: 24 ページ: 2682-2693
10.1016/j.celrep.2018.07.108.