キリンのように長い軸索を持つ生物の分子モーターはそれにあわせて高速化しているかどうかを解析するために、全ゲノムシークエンスが完了しているキリンの全ゲノム情報を解析し、シナプス小胞の軸索輸送キネシンKIF1Aを探索した。RNAseqのデータがないために解析は難航したが、幸いKIF1A遺伝子は非常によく保存されていたため、KIF1Aの全長配列を得ることに成功した。キネシン型モータータンパク質はモータードメインと呼ばれる部位によって微小管上を歩行する。モータードメインの配列を解析したところ、ネックリンカーのような速度に重要な働きを持っている部位にアミノ酸置換が起こっていることがわかった。キリンKIF1Aの速度を計測するために、そのDNA配列を合成した。私が得意とする線虫を用いた解析を行うためにコドンはあらかじめ線虫に調節した。この配列を線虫で発現してシナプス小胞の軸索輸送の速度変化を計測するためのプラスミドベクターを作製した。また、in vitroの解析を行うために大腸菌でキリンKIF1Aのモータードメインを発現するためのベクターも作製した。 KIF1Aに加え、KIF5Aキネシンについても岡田康志東京大学理学部教授との共同研究によって解析を行った。KIF5Aの線虫ホモログであるUNC-116はミトコンドリアの軸索輸送に関与していることがわかっている。キリン型KIF5Aが軸索輸送s九度を変化させるかどうか解析するため、UNC-116のモータードメインをKIF5Aに置き換えたキメラ遺伝子を作製した。
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