研究実績の概要 |
合成したキリンKIF1Aのモータードメイン(1-393アミノ酸)をmScarletに融合したリコンビナントタンパク質を大腸菌で発現し、可溶化画分から精製することに成功した。過去の多くの研究でマウスやラットのKIF1Aのモータードメインはダイマーを形成しないと考えられてきた。全反射蛍光顕微鏡を用いた1分子観察を行うと、モノマーの場合はバイアスのかかったブラウン運動をする一方で、他のタンパク質由来のcoiled-coilドメインを結合するとダイマーになり、processiveな動きが観察される(Okada et al., Science, 1999; Tomishige et al., Science, 2002)。しかしならがら、意外なことに、キリンのKIF1A(1-393)は外来性のcoiled-coilを付加しなくてもprocessiveなダイマー型の動きをすることがわかった。このことはキリンKIF1Aは2量体であることを示唆した。coiled-coilドメインを付加することでダイマーにしているマウスやラットのKIF1Aと今回の実験で使っているcoiled-coilドメインを付加していないキリンKIF1Aとではコンストラクトが異なるため、速度を直ちに比較することは難しいという問題に直面した。そのため、現在はラットKIF1Aで同じリコンビナントタンパク質を作製する、あるいはキリンのKIF1Aに外来タンパク質のcoiled-coilを付加するといった実験を行っている。 線虫ホモログであるunc-104の欠損変異体はシナプス小胞が軸索輸送されないため線虫が運動できなくなる。この線虫unc-104変異体にキリンのKIF1Aを発現することでレスキューすることに成功した。
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