研究課題
研究の目的は、ネナシカズラが宿主と交信しながら吸器を分化させて栄養成長・生殖成長を進める一連の過程の分子解剖を行い、茎寄生戦略の分子機構解明の突破口を開くことである。今年度はFTを介した花成の分子メカニズムの解明を進め以下の結果を得た。ゲノムデータの解析から、アメリカネナシカズラ(以下 ネナシカズラと略す)が2つのFTオルソログCcFT1とCcFT2をもつことがわかった。更に、CcFT1では花成誘導型から抑制型へと機能転換を引き起こす1アミノ酸置換が確認された。また、両遺伝子は宿主への寄生部でもっとも発現が高く、CcFT1は幼若期に、CcFT2は成熟期に高い発現を示した。次に、両遺伝子をシロイヌナズナ内で過剰発現させ、宿主の花成タイミングを調べた。実験結果は、CcFT1/2がシロイヌナズナにおいては花成誘導因子や花成抑制因子として機能しないことを示唆していた。一方、CcFT2過剰発現体シロイヌナズナに寄生させたネナシカズラは、顕著に早咲きとなった。この結果は、CcFT2はネナシカズラでは花成誘導因子として機能することを示している。以上の結果から、ネナシカズラでは、CcFT2による内生の花成制御機構が保存されていること、CcFT1/2は、しかし、宿主であるシロイヌナズナの花成には影響しないことが明らかとなった。続いて、ネナシカズラが宿主由来のFTタンパク質を吸収し、それを情報として利用しているかどうかを調べるために、AtFT-EGFPを過剰発現させた宿主にネナシカズラを寄生させ、ネナシカズラ内へのAtFT-EGFの移行と、花成時期を調べた。その結果は、ネナシカズラは、、AtFT-EGFPを吸収するものの、花成は影響されず、情報として利用していない可能性が示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
寄生植物と宿主間でのFTの相互作用についての予想外の知見を得ることができた。
ネナシカズラが宿主のFTによる影響を受けない仕組みの分子解剖を、FTとFDの蛋白質相互作用の特異性という視点から解明する。また、吸器形成時の維管束分化過程のネナシカズラと宿主間の相互作用に力点をおいて、両者の相互作用の解明を進める予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件)
Nature Plants
巻: 4 ページ: 669-676
10.1038/s41477-018-0217-7
Science
巻: 361 ページ: 181-186
10.1126/science.aat1577
https://www.sci.kanagawa-u.ac.jp/bio/faculty_member.html
http://www.biology.tohoku.ac.jp/lab-www/nishitani_lab/