研究課題/領域番号 |
17K19374
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
西谷 和彦 神奈川大学, 理学部, 教授 (60164555)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2023-03-31
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キーワード | ネナシカズラ / 細胞壁 / 寄生 / 吸器形成 / 転写因子 |
研究実績の概要 |
絶対寄生植物であるアメリカネナシカズラ(Cuscuta campestris)は、宿主の茎に巻きついた後、自身の茎の皮層組織内に分裂組織を新生させる。分裂組織の最外層(背軸側)の細胞列(先端細胞)は探索糸に分化して伸長して宿主表皮の細胞壁を突破して宿主組織内に侵入して伸長を続け、維管束内に達すると、探索糸は管状要素に分化し、最終的に宿主道管と連結し、寄生が成立する。これら一連の吸器形成過程で、アメリカネナシカズラと宿主両者の細胞壁機能が重要な役割を担っていると予測されているが、その分子機構は不明である。今年度の研究では、アメリカネナシカズラの吸器が宿主の表皮細胞を突破する過程での細胞壁機能の解明に焦点を当て、昨年度までに解析を終えていたトランスクリプトーム解析データを調査した。その結果、探索糸の侵入の初期過程で、細胞壁の分解に関わるエンド-β-1,4-グルカナーゼ、ポリガラクチュロナーゼ、およびペクチンメチルエステラーゼをコードする細胞壁酵素遺伝子の発現パターンと一致した発現特性をもつ2つのAPETALA2 / ETHYLENE RESPONSE FACTOR(ERF)遺伝子を見出した。この二つの遺伝子は、我々が確立したin vitroの吸器誘導系においても、探査糸が侵入する初期過程で特異的に発現することを明らかにした。興味深いことに、この遺伝子のトマトのオルソロググループはトマトの器官脱離における細胞壁酵素の発現制御に関係していることが報告されている。今回の解析により、アメリカネナシカズラの吸器形成における細胞壁関連遺伝子の制御に関わる分子過程の糸口の一つを見つけることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
吸器形成に関わる細胞壁の役割の解明の糸口の一つを掴むことができた。
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今後の研究の推進方策 |
概ね所定の成果が得られたので、残りの一年では、これまでの成果の取りまとめと、成果公開のための論文や学会発表を行う。残りの予算額はそのための経費に用いる計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた研究発表のための出張が遠隔での開催となったことと、論文の出版経費の支払いが伸びたため。
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