研究課題
茎寄生植物であるアメリカネナシカズラは、宿主の茎に巻き付くと接着面に吸器と呼ばれる分裂組織を新生し、その最外層の細胞列から探索糸を分化させる。探索糸は宿主組織に向かって伸長し、宿主維管束内に侵入した後、道管に分化し、宿主道管と連結して寄生が成立する。この一連の過程は古くより記載されているが、その分子過程は未解明である。本研究では、シロイヌナズナのロゼット葉組織を宿主とするin vitro寄生誘導系や、タイムラプス撮影による精度の高い寄生段階識別法を独自に開発し、これらの技術を用いて寄生に至るまでの一連の分子過程をトランスクリプトームにより解析した。これまでの解析で、(1)宿主に巻き付いた後の探索糸伸長促進には二段階の核内倍加が関与し、この過程は宿主が合成するエチレンをアメリカネナシカズラが感受して、CYCA2を介した経路を通して制御されていること(H. Narukawa et al. 2021)、(2)探索糸は宿主無しでも木部分化の初期過程は誘導されるが、管状要素への分化の最終段階に必須の遺伝子の発現は、宿主道管との接触により誘導されること(Y. Kaga et al. 2020)を、明らかにしてきた。今年度は、探索糸が宿主表皮組織を突破して宿主維管束内に侵入する過程での細胞壁分解過程に着目してこれまでのトランスクリプトームのデータを見直した。その結果、アメリカネナシカズラが宿主細胞壁を分解する際に用いる転写因子や細胞壁遺酵素群は、近縁種であるトマトなどで解明されている離層形成に関わる遺伝子群と共通点が多いことが判明した(R. Yokoyama et al. 2022)。この結果は、ネナシカズラ属が、茎寄生の仕組みを進化させた際に、離層形成などの既存の細胞壁分解系に関わる制御モジュールを採用したことを示唆している。
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Plant, Cell and Environment
巻: 6 ページ: in press
10.1111/pce.14575
Frontiers in Plant Science
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