前年度は線虫C. elegans を活用することにより同定したSFT-4が小胞体の輸出部位に局在し、リポタンパク質の一種である卵黄成分の小胞体からの輸送に積み荷受容体として働くことを明らかにした。また、SFT-4のヒトホモログであるSurf4が低密度リポタンパク質 (LDL) の小胞体からの輸送にやはり積み荷受容体として働くことを見出した。そこで、本年度はSurf4がその他の分泌タンパク質の小胞体からの輸出に関与する可能性について検討した。その結果、膵臓β細胞由来のINS-1培養細胞においてSurf4をノックダウンすると、インスリンの分泌が顕著に抑制されることが明らかとなった。INS-1細胞においてGFP-Surf4を発現すると小胞体及び小胞体輸出部位に局在することから、Surf4はインスリンの小胞体からの輸出に関与することが示唆された。一方で、Surf4は小胞体輸出部位に局在することから、小胞体輸出部位形成におけるSurf4の役割についても検討した。その結果、哺乳類培養細胞においてSurf4をノックダウンするとCOPIIタンパク質でラベルされる小胞体輸出部位のサイズが顕著に低下することが判明した。また、小胞体輸出部位に局在するその他の膜タンパク質の分布も大きく変化することが明らかとなってきた。以上のことから、SFT-4/Surf4ファミリータンパク質はリポタンパク質だけではなくインスリンのような内分泌ホルモンの輸送にも働くとともに、小胞体輸出部位の形成にも関与することが示唆された。
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