研究実績の概要 |
本研究の目的は植物の子葉表皮組織を構成するほぼすべての細胞に対して,成長過程における個々の細胞の位置,形態,細胞骨格構造の変化を計測する技術を開発することである.この目的を達成するため,観察実験と画像解析の両面から大規模イメージング計測に向けた研究開発に取り組んだ.具体的には(1)光毒性を軽減する試料栽培条件および撮影条件の検討,(2)細胞形態および細胞骨格系の構造特徴を定量的に評価する画像解析系の開発, を実施した.(1)については,スピニングディスク式共焦点スキャナと高感度カメラに基づく顕微鏡システムを用いて,高倍率の葉表皮組織の経時観察を実施し,撮影間隔と光毒性の関係を検討した.(2)については,組織画像から表皮細胞の領域分割(セグメンテーション)の自動化と細胞形態評価,また細胞骨格構造の定量評価を検討した.この過程において,細胞骨格の束化の定量評価法に関して大きな進捗が認められた.従来,細胞骨格の束化を定量評価法としては以前私たちの研究グループが開発した繊維状構造を構成する画素群の輝度分布の歪度を利用する方法(Higaki et al. 2010 Plant J)が標準的な手法として国内外を問わず広く活用されていた.ところが本研究を進める過程で,細胞骨格を構成する画素群の輝度分布の変動係数がより汎用的な束化の評価指標になりうる可能性を見出すことができた.また,本研究の生物実験および画像解析と密接に関連する複数の共同研究を国内外の研究グループと共に展開して本年度中に4報の原著論文を発表した(Takahashi et al. 2017 Front Plant Sci, Kuki et al. 2017 Plant Direct, Dou et al. 2018 Plant Physiol, Akita et al. 2018 Plant Sig Behav).
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