研究課題
本研究は、新月と満月の日に繰り返し産卵するクサフグを用いて、半月周性の産卵リズムを刻む生物時計の分子基盤を確立することを目的とする。そのため、クサフグの視床下部のトランスクリプトーム解析を行い、月周時計を構成する分子群と月周時計の調節を受ける分子群の候補を探索した。また、月周リズムの発振に関わると考えられる概日時計遺伝子の一つであるクリプトクローム(Cry)の月齢に伴った発現変動を解析すると共に、脳内発現細胞の同定を行った。具体的には、平成30年度では下の2つの研究成果を得た。1.H29年度の産卵期に月齢に合わせて5日おきに6回採取した脳試料を用いて、視床下部を含む終脳/間脳領域のRNAを調製した。これらのRNA試料からcDNAライブラリーを作製してNovaSeq6000を用いてRNA-Seq解析を行った。約17700個の発現遺伝子の中で約6790個の遺伝子が月齢に伴った発現変動を示した。それらのうち約3650個の遺伝子が半月周性の発現変動パターンを示し、そのうち550個の遺伝子は新月と満月にピークを持つ変動パターンを、また3100個の遺伝子は新月と満月に発現量が低下する変動パターンを示した。これらの遺伝子の中には、15時間周期の発現変動を示すmel1b、npas3、isyna1が含まれていた。15時間周期の変動遺伝子が半月周性に発現振動することは、半月周性リズムが概潮汐時計と概日時計の干渉作用によって駆動されることを示唆している。2.Cryのパラログ遺伝子のうち、cry1は新月と満月に発現量が低下する半月周性の変動パターンを示したが、cry2とcrydashは変化しなかった。脳内のCry発現細胞の同定には至っておらず、継続して解析を進めている。
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