| 研究課題/領域番号 |
17K19391
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| 研究機関 | 京都大学 |
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研究代表者 |
長谷 あきら 京都大学, 理学研究科, 教授 (40183082)
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| 研究分担者 |
工藤 洋 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (10291569)
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| 研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2021-03-31
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| キーワード | 光応答 / 光受容体 / 野外 / ハクサンハタザオ / トランスクリプトーム |
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| 研究実績の概要 |
植物の光応答の分子機構に関する知見は豊富である。しかしながら、これらは均一の人為的実験条件下で得られたもので、様々な時間スケールで大きく変動する野外の光環境に対する応答は不明である。本研究では、自然環境下で自生するハクサンハタザオ（モデル植物であるシロイヌナズナの近縁種）の光応答の解析を進め、既知の光応答分子ネットワークが複雑な光環境変動のもとでどのように作動するかを明らかにし、野外応答を特徴付ける新規の制御経路の発見を目指す。また、これに合わせてモデル植物であるシロイヌナズナを用いた室内実験も行い、野外で見られる光応答の機構解明の一助とする。
本年度においてはまず、シロイヌナズナ変異体を用いた単色混合光実験により、野外で実現する光環境においては、phyA、phyB、cyrがお互いを抑制することを示した。次に、工藤博士らのトランスクリプトームデータの解析を進めた。まず、R:FR比応答について検討したが、明確な応答は観察されなかった。一方、光量に対する応答については、以下に述べるように、多数の新規光応答遺伝子が見出された。
光応答遺伝子の網羅的な探索については、各試料に対応する光環境パラメターをいくつか設定し、それらの値に対して当該遺伝子の発現量が相関する遺伝子を選別した。その結果、短期の光環境に応答を示す遺伝子が多数検出された。さらに興味深いことに、一日前の特定時刻の光強度に影響される遺伝子も存在することが分かった。以上の遺伝子の中には、これまで光応答遺伝子として認識されていない遺伝子が多数含まれていた。
本研究で扱うデータは多数の環境データ、遺伝子発現データを含んでおり、将来的にはさらに詳しい解析を加える必要があるが、これまでの解析により、野外の光応答の特徴の一端が明らかになった。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シロイヌナズナ変異体を用いた単色混合光実験により、野外で実現する光環境においては、phyA、phyB、cyrがお互いを抑制することを示した。この知見は、野外光応答を理解するための重要な基盤となる。
次に、工藤博士らのトランスクリプトームデータの解析を進めた。既知の避陰応答遺伝子をいくつか選び、予備的に光応答の有無を調べたところ、その一部で光量に対する統計的に有意な応答が確認された。一方、R:FR比応答については、明確な応答は観察されなかった。ただし、野外のハクサンハタザオがより低いR:FR比を経験する場面も季節的に生じているので、将来的には、ピンポイントで試料採取を行うことにより、明確なR:FR比応答が観察されるかもしれない。
次に、光応答遺伝子の網羅的な探索を進めた。まずは、光環境パラメターをいくつか設定し、それらの値に対して当該遺伝子の発現量が相関するかどうかを調べ、統計的に有意な相関がみられた遺伝子を光応答遺伝子とした。さらに、当該遺伝子がどのような光条件（過去数時間の平均、過去数日の平均、一日前の値など）に対して最も高い相関を示すかを調べ分類した。その結果、短期の光環境に応答する遺伝子が最も多く観察され、さらに興味深いことに、一日前の特定時刻の光強度に影響される遺伝子も存在することが分かった。以上の遺伝子の中には、これまで光応答遺伝子として認識されていない遺伝子が多数含まれていた。以上の結果は、野外において実験室では知られていかったような光応答が起きていることを強く示唆するものである。
本研究で扱うデータは多数の環境データ、遺伝子発現データを含んでおり、将来的にはさらに詳しい解析を加える必要があるが、これまでの解析により、当初設定していた、「野外の光応答の実態を捉える」という意味では、十分に目標を達成できたと考えている。
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| 今後の研究の推進方策 |
上に述べたように、本研究で扱うデータの構造が複雑であったため、光応答している可能性がある遺伝子の割り出しにかなりの時間がかかった。解析の結果、2種類以上の光応答様式が存在することや、それぞれでどのような機能をもった遺伝子が応答しているかが明らかになったので、研究期間を延長して、これらの応答の室内実験による確認を目指す。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
野外トランスクリプトームデータの解析を進めたところ、データの構造が予想以上に複雑であり、光応答している可能 性がある遺伝子の割り出しにかなりの時間がかかった。解析の結果、2種類以上の光応答様式が存在することや、それ ぞれでどのような機能をもった遺伝子が応答しているかが明らかになったので、これらの応答を室内実験で確認するた めに、研究期間を延長する必要がある。
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