研究課題/領域番号 |
17K19394
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
粂田 昌宏 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (00582181)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | ソノジェネティクス / 音波 / 遺伝子 / 遺伝子操作 / 遺伝子工学 / 細胞 |
研究実績の概要 |
初年度である平成29年度は、発見した音波応答性遺伝子の応答特性を詳細に解析して学術誌に報告するとともに、ゲノムワイドに音波応答遺伝子を検出する取り組みを開始した。主な実績は以下である。 1.音波応答性遺伝子の特性解析 メカノバイオロジーや超音波に対する遺伝子応答の知見を参考に、音波刺激によって有意にその活性を低下させる遺伝子を複数発見し、その応答特性を解析した。その結果、この遺伝子応答には、1)音波の音圧と波形が重要な要素である一方、周波数はあまり影響がないこと、2)明らかな細胞種依存性がみられること、などを見出した。これらの知見を論文にまとめ、学術誌に報告した。 2.音波応答遺伝子のゲノムワイド探索 音波に対する影響が顕著に見られたマウス筋芽細胞C2C12を用い、次世代シークエンサーを用いたRNA-seqにより、音波依存的にその発現量を変化させる遺伝子を検索した。その結果、音波により活性的・抑制的制御を受ける遺伝子候補を多数得ることに成功した。現在その実験的検証を進めるとともに、データ解析を進めて音波に対する細胞応答の全体像を得ることを目指している。 これらにより、細胞レベルで遺伝子の音波応答が起きる可能性を示すことができた。この業績は、本研究が目する音波依存的な遺伝子制御システム「ソノジェネティクス」の足掛かりとなるものであり、今後の研究発展に向けた基礎を固めることができたものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度には、音波応答遺伝子を学術論文に報告することで、今後の研究を進めていく足がかりを作ることができた。また、ゲノムワイド解析も予定通り進展し、今後の研究期間において音波応答性遺伝子制御システムを構築する基礎が整いつつある。これらのことから、全体の研究はおおむね順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の進展を元に、今後は音波摂動による遺伝子操作技術「ソノジェネティクス」の確立のため、当初の予定の通りに以下の計画を推進する。 1.人工導入した遺伝子を音波で操作する技術の開発 RNA-seqで挙げた音波応答性遺伝子のプロモーターをクローニングし、それが音波応答性を示すかどうかをレポーターアッセイにより明らかにする。これにより、音波に応答するゲノム領域を特定することができる。 2.音波により細胞内在性遺伝子を操作して細胞分化を制御する技術の開発 いくつかの音波応答性遺伝子は骨芽細胞分化に関係する。このことから、音波を用いて細胞分化をコントロ―ルするシステムの構築を目指し、様々な細胞種や音波を用いて定量的に細胞分化能を評価していく。
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