研究課題/領域番号 |
17K19398
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
赤沼 啓志 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (50450721)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | ゲノム編集 / ゼブラフィッシュ / ノックイン / ライブイメージング |
研究実績の概要 |
平成29年度は、まずV2介在神経の前駆細胞(V2細胞)の形状変化を経時的に記録することを試みた。しかし、過去の研究(Akanuma et al., Nature Communication, 7:11963, 2016)でV2細胞の形を観察するのに用いていた遺伝子改変ゼブラフィッシュTg(vsx1:GFP)では、細胞間の蛍光強度のばらつきが大きく、効率良くV2細胞の形成から分裂までを記録することが難しいことが判明した。また、V2細胞の形状変化に伴うDeltaCタンパク質の局在の定量的な変化を追跡するため、内在のdeltaC遺伝子座に直接in-frameで蛍光タンパク質の配列を導入する必要があった。そこで、これらの問題を解決するため、CRISPR/Cas9システムによるターゲティングを行うことにした。 ゼブラフィッシュを用いたゲノム編集は、近年盛んに行われるようになったが、遺伝子導入に関しては、マウスなどの他のモデル生物と比べると効率の低さが問題であった。そこで、導入効率を改善するために条件検討を行ったところ、合成Cas9 mRNAを用いると、GFP陽性胚の割合は高いがモザイク性は低く、一方、リコンビナントCas9タンパク質を用いると、合成mRNAと比べてGFP陽性胚の割合は下がるが、モザイク性は上がることが分かった。また、クロマチン構造を緩めるDNAメチル基転移酵素阻害剤5-アザシチジンとヒストン脱アセチル化酵素阻害剤トリコスタチンAをゼブラフィッシュ卵に共注入すると、CRISPR/Cas9によるゲノムの切断効率、および蛍光タンパク質配列の導入効率が上昇することを見出した。現在は、これらの条件をもとに、腹側神経管マーカーであるnkx6.1やvsx1、deltaCといった各遺伝子座に蛍光タンパク質配列の導入を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初予定していた遺伝子改変ゼブラフィッシュTg(vsx1:GFP)では、V2細胞の形状履歴を効率良く記録するのに十分なGFPの発現を得られず、新たに遺伝子改変ゼブラフィッシュを作製する必要があった。また、定量性を維持したままDeltaCタンパク質の局在変化を追跡するには、内在のDeltaCタンパク質を可視化する必要があった。これらの理由から、当初の実験計画を変更し、CRISPR/Cas9システムによる遺伝子改変を行うことにしたため。
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今後の研究の推進方策 |
Tg(vsx1:GFP)の代わり、nkx6.1プロモーターで膜局在型mCherryを発現する遺伝子改変ゼブラフィッシュを用いる。V2細胞の同定には、vsx1プロモーターでCeruleanを発現させる。DeltaCタンパク質の可視化には、deltaC-GFP融合遺伝子を導入する。これらの遺伝子改変ゼブラフィッシュを作製した後は、当初の実験計画に立ち返り、V2細胞の形状変化の履歴と非対称分裂後の娘細胞の運命選択の関係を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果である。
当該年度以降分の助成金は当初の計画通りに使用する予定である。 次年度使用額については、研究計画の変更に伴い、当初の予定にはなかった遺伝子改変ゼブラフィッシュを作製する際のPCR、プラスミド精製などの生化学用試薬や飼育管理費、および飼料代として使用する。
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