研究課題
再生医療を目指した細胞からの三次元組織構築法の研究が著しい発展を遂げているが、血圧に耐える強度を求められる血管組織ではその開発は極めて遅れている。研究代表者は先行研究で、生理的範囲を超える極めて高い圧力を負荷すると、ラット平滑筋細胞では細胞同士が接着して弾性線維などの細胞外基質を多く産生し、強固な血管様組織ができることを見出した。本研究では、ヒト血管平滑筋細胞を用いて通常生体内で経験しないレベルの高圧力を感受する機序を解明し、大気圧環境下では十分に引き出せなかった細胞の能力を最大限に利用することで、最終的には移植可能な弾性・剛性を有する三次元組織を短期間で構築する方法を開発することを目的とする。研究代表者は、ラット平滑筋細胞を用いた実験で、生理的範囲を超える高圧力環境の培養は、弾性線維をはじめとする細胞外基質を豊富に産生させ、細胞播種と高圧力印加を交互に繰り返すと強固な血管様組織が構築されることを見出した。さらに、加圧装置の改良を行い、新規作製した加圧装置を用いることで、酸素分圧やpHといった環境を詳細にリアルタイムでモニターすることに成功した。本年度は、様々な圧力と酸素分圧の条件でヒト平滑筋細胞で多層の強度あるシートを作製できた。さらに、平滑筋細胞の最上層に内皮細胞を播種し2層構造の血管シートを作製する条件を見出した。このシートでは内皮細胞と平滑筋細胞の間に弾性線維の構造を確認することができた。ヒト平滑筋細胞シートはヌードラットへパッチとして移植し、短期生存を確認した。
2: おおむね順調に進展している
本年度は昨年度に引き続き、酸素分圧の条件を加味した細胞シート作製に適切な培養条件の検討を行い、強度のあるシートの作製に成功した。さらに、内皮細胞と平滑筋細胞を含有したシートを作製することができ、予定していた実験を行うことができた。さらに、平成31年度に行う予定であった、動物への移植実験を行い数例の検討では動脈圧に耐えられる細胞シートができたことが確認でき、次年度に向けた準備を順調に行うことができた。
本年度の検討結果を元に、次年度は細胞シートの動物への移植実験を中心に行う予定である。時間の経過を追って解析を行うことで細胞シートの生体適合性を検討する。ヒト由来細胞のマーカーで移植されたシートを染色することで、移植されたシートの残存性やホスト側の細胞の浸潤などを検討項目とする。酸素分圧がむしろ低めである方が細胞シートの作製に適しているという結果も得られており、酸素分圧と圧力印加条件の組み合わせが、細胞シート作製に必要なフィブロネクチン原線維形成にどのような影響を与えているかも細胞レベルで検討してゆく。
細胞シート作製に要する細胞培養にかかる経費が予定より少ない額で目標を達成できたため差額が生じた。次年度の動物への細胞シート移植実験をタイムコースを複数設定して行う予定のため、差額はこれらの解析にあてる。
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