研究課題/領域番号 |
17K19403
|
研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
横山 詩子 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (70404994)
|
研究分担者 |
齋藤 純一 横浜市立大学, 医学研究科, 客員研究員 (30779301) [辞退]
|
研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2021-03-31
|
キーワード | 再生医療 / 循環器 / メカニカルストレス / 細胞・組織 / バイオテクノロジー |
研究実績の概要 |
再生医療を目指した細胞からの三次元組織構築法の研究が著しい発展を遂げているが、血圧に耐える強度を求められる血管組織ではその開発は極めて遅れている。研究代表者は先行研究で、生理的範囲を超える極めて高い圧力を負荷すると、ラット平滑筋細胞では細胞同士が接着して弾性線維などの細胞外基質を多く産生し、強固な血管様組織ができることを見出した。本研究では、ヒト血管平滑筋細胞を用いて通常生体内で経験しないレベルの高圧力を感受する機序を解明し、大気圧環境下では十分に引き出せなかった細胞の能力を最大限に利用することで、最終的には移植可能な弾性・剛性を有する三次元組織を短期間で構築する方法を開発することを目的とした。研究代表者は、ラット平滑筋細胞を用いた実験で、生理的範囲を超える高圧力環境の培養は、弾性線維をはじめとする細胞外基質を豊富に産生させ、細胞播種と高圧力印加を交互に繰り返すと強固な血管様組織が構築されることを見出した。さらに、加圧装置の改良を行い、新規作製した加圧装置を用いることで、酸素分圧やpHといった環境を詳細にリアルタイムでモニターすることに成功した。昨年度までに得られた、シート作製に最適な圧力と酸素分圧の条件でヒト平滑筋細胞で多層の強度あるシートを作製し、弾性と剛性が生体への移植に十分であることが確認できた。さらに、ヒト平滑筋細胞シートをヌードラットへパッチとして移植して5か月までの生存を確認し、3週間から5か月までの組織学的解析を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は昨年度の検討で得た細胞シート作製に適切な培養条件を用いて、10層の平滑筋細胞シートを作製し、弾性と剛性を有する多層細胞シートの作製に成功した。さらに、予定していた動物への移植実験を複数回行い、組織学的解析でグラフトの生存性と生体適合性を確認することができた。加圧装置の故障のため一部の細胞内シグナルに関するデータが取得できなかったため、研究期間の延長を行ったが、進捗は概ね順調であり次年度の論文投稿に向けて準備を行うことができている。
|
今後の研究の推進方策 |
時間の経過を追って解析を行い、細胞シートの生体適合性を確認出来ているため、次年度は細胞シートの動物への移植実験結果の統計学的解析と、圧力感受性因子の細胞内での挙動解析を行い、論文投稿を予定している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究に必須である圧力印加装置が故障したために当初の計画が遅延し論文投稿を完了できなかったことから、次年度への残額の繰り越しを申請した。すでに圧力印加装置の故障は解消し、論文投稿を行う予定である。
|