本研究では、血管内皮細胞へかかる圧負荷をFRETプローブにより可視化することで、血管形態形成において 血流に起因する圧変動がどのように寄与しているかを明らかにすることを目的とする。そのために、ゼブラフィッシュを実験モデルとして、近年 開発が進んでいるFRET を利用した圧センサープローブ(ActTS-GR)を血管特異的に発現させ、血管の形態形成への影響をライブイメージングによって評価する。平成29・30年度では、Gal4-UASシステムを利用して圧プローブを血管内皮で特異的に発現する遺伝子組み換えゼブラフィッシュ(flk1:GFF、UAS:ActTS-GR)の作成に成功した。令和元年度には、アフリカツメガエの初期胚で血管発生過程の血管内圧変化を可視化した報告を参考にして、Image Jを用いたFRET画像の作成を、ゼブラフィッシュ胚血管系で試みた。その結果、FRETイメージ自体の作成には成功したが、血管内皮でのFRET効率の差を明確に可視化するには至らなかった。得られたFRET画像では、FRET効率がプローブの発現量自体に比例した形で確認され、部位特異的な変化は認められなかった。この原因としては、プローブの発現量が弱すぎること、または使用したActTS-GRが血管内皮にかかる圧負荷の変化を可視化するに足りるだけのFRET効率の変動を示さないことが原因となっている可能性が推察された。今後は、よりActTS-GRの発現量の高い系統の作成を進めていき、ゼブラフィッシュ血管内皮での圧変動の可視化を目指していく。
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