近年、エクソソーム研究は大きく拡大し、その存在と意義に関して知見が集まりつつある。特に、エクソソーム中に含まれるmicroRNAの役割とその病態(特に癌)への関与は注目を集めている。しかし、神経性や腫瘍性疾患など、エクソソームの病態での役割の解析が進んでいるものは限られており、病態生理における全体像の理解は不十分と考えられる。我々は、エクソソームの炎症性疾患における役割を明らかにすることを目的とし、これまでに培養マクロファージのエクソソームにおいてiPLA2、COX-2、PGE合成酵素の存在を確認している。 本年度は、昨年度に実施した慢性関節リウマチモデルマウスの血中エクソソーム内microRNAのアレイ解析から、最終的な候補として、miR-328-5pを見いだした。日数経過における発現量を検討したところ、関節炎の症状が急速に進行していく時期において、miR-328-5pが顕著に低下していることが明らかとなった。また、全サンプルにおけるBalb/cマウスとSKGマウスを比較した場合においてもSKGはmiR-328-5pの発現が優位に低く、その傾向は、起炎物質投与前においても認められた。更に、各系統の炎症スコア症状との相関を調べたところ、症状のないBalb/cマウスが最もmiR-328-5pの発現が高値となることが明らかとなった。 以上のことから、miR-328-5pは、何らかの標的遺伝子の発現を抑制することにより慢性関節リウマチの発症を抑制的に制御している可能性が推測された。標的遺伝子やその役割に関しての解明までは至らなかったが、今後の研究の焦点を明確にすることが出来た。また、miR-328-5pの低値は遺伝的な背景や発症前の状況を反映している可能性が考えられ、慢性炎症性疾患のバイオマーカーとして有用である推定される。
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