研究課題
上皮細胞は組織から脱落して一生を終える。脱落は、隣接細胞との相互、協調作用によって行われる “細胞社会における細胞死” であり、細胞自律的な死と異なって分子機構の解明は遅れている。また、細胞が脱落するには脱落細胞と隣接細胞間の細胞接着が消失する必要があるが、接着の消失はバリアの破綻の恐れを孕むため、これを防ぐための洗練された機構が想定されるが詳細は不明である。以上の背景のもと本研究は、ヒト上皮細胞株を用いてスクリーニングにより細胞脱落の各過程及び、その際に上皮のバリア機能を維持する機構を司る遺伝子を同定することを目的とする。当初は、細胞脱落の各過程を司る遺伝子を広くスクリーニングする計画であったが、私達は、細胞の膜動態のライブイメージング解析によって「脱落細胞は脱落過程においてその一部を断片化する」現象を見出したため、この現象に着目し、ここに関与する遺伝子のスクリーニング (候補遺伝子スクリーニング)を培養細胞を用いて行うこととし、結果、複数の遺伝子を同定した。まず、細胞膜の脂質二重層の内層に局在するホスファチジルセリンを外層に露出させる働きを持つスクランブラーゼがこれに関与することを明らかにした。また、これら遺伝子のノックダウンを哺乳類培養細胞及びショウジョウバエの生体上皮などで行うと、脱落細胞の断片化が抑制されるだけでなく、細胞が脱落を完了するまでに長時間を要す異常が観察され、脱落細胞の断片化が、細胞脱落のスムースな実行に重要であることが示された。さらにこの断片化は、細胞外小胞の形成であり、Arfファミリータンパク質がこの形成を担うことを明らかにした (最終年度)。以上の知見は、細胞外小胞の形成が、細胞を組織から速やかに剥離させることを促進するという、細胞脱落の実行過程の重要な機構を明らかにした。
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10.21203/rs.3.rs-257262/v1