研究課題/領域番号 |
17K19412
|
研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
上田 貴志 基礎生物学研究所, 細胞動態研究部門, 教授 (10311333)
|
研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
|
キーワード | ゼニゴケ / 油体 / SNARE / 分泌経路 / 進化 |
研究実績の概要 |
油体は苔類のみに存在するオルガネラで,内部にMarchantinなどの様々な生理活性物質を蓄積する.この油体が獲得された仕組みを明らかにし,それを将来のオルガネラ創造の基盤とするため,平成29年度にはまずゼニゴケの油体を単離するための方法論の確立を目指した.油体を単離するためには,まず油体を含む細胞である油体細胞を単離することが必要となる.そこで,ゼニゴケの葉状体を構成する細胞を機械的処理や酵素処理により分離させる方法を模索した.これまでの実験により,シロイヌナズナなどで用いられる酵素処理の条件ではゼニゴケ葉状体のプロトプラスト化は出来ないことが分かっている.そこで酵素濃度や機械的処理の条件を検討した結果,ブレンダーで葉状体を破壊し,濾過した後に酵素処理することで,油体細胞を含む葉状体細胞を解離させることが出来るようになった.この細胞の解離の効率を向上させるため,現在も引き続き条件の検討を進めている. また,本研究課題と並行して進めていた油体形成が異常となる変異体の順遺伝学的探索の過程で,過剰発現により油体細胞分化を高進させることが出来る転写因子の単離に成功した.この転写因子の機能欠失変異体では,油体細胞の分化が全く起こらない.そこで,油体過剰蓄積変異体および油体欠失変異体を用いてRNAseq解析をおこない,油体形成に関わる因子の網羅的探索をおこなった.その結果,膜局在型の輸送体を含む多くの膜タンパク質を同定することが出来た.これらの中には,油体に局在するタンパク質が多く含まれると期待される.そこで現在,それら候補タンパク質をコードする遺伝子のクローニングを進めるとともに,ゲノム編集技術を用いた機能欠失変異体の作成準備を進めている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
油体の単離に向けた条件検討が進んでいる.また,並行して進めていた順遺伝学的な研究の成果から,油体を構成するタンパク質の候補が多く得られたため.その知見も取り入れつつ研究を進めることが可能となった.
|
今後の研究の推進方策 |
今後も油体の単離方法の確立を目指すとともに,油体を過剰に蓄積する変異体からの油体の単離にも挑戦する.また,RNAseq解析により得られた油体タンパク質候補についても,引き続き解析を進める.
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度はゼニゴケ葉状体からの細胞単離の実験を重点的に進めたため,試薬等の購入の必要が無かった.現在は細胞単離方法の確立の目途が立ち,さらに油体の構成タンパク質の候補が多く得られていることから,平成30年度には分子生物学的実験,細胞生物学的実験を一気に進めることが必要となり,さらに研究成果や共同研究者との意見交換のための旅費も必要となるため,当該年度分と合わせて必要額を執行する予定である.
|