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2017 年度 実施状況報告書

局所的シグナル分布が作り出す組織のパターン形成

研究課題

研究課題/領域番号 17K19418
研究機関大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設)

研究代表者

高田 慎治  大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 教授 (60206753)

研究期間 (年度) 2017-06-30 – 2019-03-31
キーワード遺伝子 / 細胞 / シグナル伝達 / 極性
研究実績の概要

本研究では、分泌性シグナル蛋白質であるWnt11により細胞内でのローカルな極性形成が引き起こされ、さらに周囲の細胞との相互作用により組織全体の平面内極性が形成されるという仮説を設定し、その検証を行うことを目的としている。本年度は、平面内細胞極性が形成される過程でのWnt11の機能を理解するため、以下の2つの研究を行なった。
(1)内在性Wnt11蛋白質の空間分布の解明:平面内細胞極性に着目し、それを制御する分泌性シグナル蛋白質であるWnt11の組織内分布を解析した。具体的には、原腸胚期のアフリカツメガエル胚を抗Wnt11抗体を用いて免疫染色し、内在性Wnt11タンパク質の空間分布の変化を観察することができた。
(2)グローバルな濃度勾配モデルとローカルな局在化モデルの直接的な検証:(A)アフリカツメガエル初期胚を用いた研究から、Wnt11を局所的に発現させることによりPCP因子であるPrickleやVanglが極性をもって細胞の周囲に局在化することが示されている (Chu & Sokol (2016))。そこで、Wnt11抗体を用いてこの系でWnt11蛋白質を可視化し、PCP因子の極性化過程におけるWnt11の空間分布を観察することを試みたが検出感度に問題があり成功しなかった。そこで、Wnt11を蛍光強度の高いタグにより標識したところ、十分な検出感度が得られ、Wnt11蛋白質の可視化に成功した。(B)また、膜結合型Wnt11蛋白質を発現させ、PrickleやVanglの局在化の広がりを調べることにより、Wntの局在化が組織全体の極性化へと向かうプロセスの一端を明らかにすることに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成29年度当初に、(1)Wnt11蛋白質の局在化プロセスの解明と(2)グローバルな濃度勾配モデルとローカルな局在化モデルの直接的な検証、を行うことを計画した。研究はほぼ予定通りに進展している一方で、(2)の実験では、Wnt11抗体によっては感度良くシグナルを検出することができなかった。そこで蛍光標識された新たなWnt11蛋白質を発現させ、Wnt11のイメージングを行なったところ、当初の予想以上の結果が得られた。このことから、当初の予定を若干変更して、Wntの局在化と組織の極性化の関係を慎重に解析する必要が生じた。その結果として、当初の予定を若干変更する必要性も出ているが、研究全体としてはおおむね順調に進んでいる。

今後の研究の推進方策

主に以下の3点に沿った研究を進める。
(2)グローバルな濃度勾配モデルとローカルな局在化モデルの直接的な検証:蛍光標識された新たなWnt11蛋白質を用いて、組織の極性化が起きる際にWnt蛋白質の動態がどのように変化するかを解析する。
(3)Wnt11蛋白質の局在化機構の解明:Wnt11を過剰発現させると1細胞内でもWnt11蛋白質の分布に偏りが生じるが、研究代表者らのこれまでの研究からは、Wnt11の局在化は受容体であるFrizzled7との相互作用を介することが考えられる。すなわち、Frizzled、Dishevelled、Prickle、Vangl等のPCP因子との相互作用によって、Wnt11ならびにこれらPCP因子の局在化が生み出される可能性が示唆されている。そこで、上記PCP因子の過剰発現や機能阻害によりWnt11蛋白質の分布がどのように影響されるかを解析する。
(4)Wnt11局在化と組織形態変化との関連性の解明:Wnt11-GFPを過剰量発現させたライブイメージングから、申請者らはWnt11が集積した細胞辺は収縮し易いことを見いだした。このようなWnt11の集積に伴う細胞辺の収縮が、内在性のWnt11が示す「極性パターン」に沿っても起きるのであれば、このWnt11の極性パターンは組織の左右方向への収縮につながることが予想され、収斂伸張運動における細胞変形の方向性をWnt11の局在化で説明することができる。そこでWnt11-GFPを形態的異常が起こさない程度の量で発現させ、Wnt11の局在と細胞形態の変化との関連を解析する。

次年度使用額が生じた理由

平成29年度に予定していた研究のうち、「(2)グローバルな濃度勾配モデルとローカルな局在化モデルの直接的な検証」において、当初予定していた抗Wnt11抗体による免疫染色法では十分な強さのシグナルが検出できなかったため、新たに蛍光タグ付きのWnt11を用いて解析を行うことになった。そのため、平成29年度に予定していた研究の一部を平成30年度に行うこととなり、次年度使用額が生じた。この次年度使用額を用いて「(2)グローバルな濃度勾配モデルとローカルな局在化モデルの直接的な検証」に関する実験を進める予定である。一方、平成30年度分として請求した助成金は、当初の予定通り、「(3)Wnt11蛋白質の局在化機構の解明」並びに「(4)Wnt11局在化と組織形態変化との関連性の解明」を行う。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] UNIVERSITY OF ABERDEEN(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      UNIVERSITY OF ABERDEEN
  • [雑誌論文] Ripply3 is required for the maintenance of epithelial sheets in the morphogenesis of pharyngeal pouches2018

    • 著者名/発表者名
      Tsuchiya, Y., Mii, Y., Okada, K., Furuse, M., Okubo, T., Takada, S.
    • 雑誌名

      Dev. Growth Diff.

      巻: 60 ページ: 87-96

    • DOI

      10.1111/dgd.12425.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Roles of two types of heparan sulphate clusters in Wnt8 distribution and signalling in Xenopus.2017

    • 著者名/発表者名
      Mii, Y., Yamamoto, T., Takada, R., Mizumoto, S., Matsuyama, M., Yamada, S., *Takada, S., & *Taira, M. (*Co-corresponding authors)
    • 雑誌名

      Nature Commun.

      巻: 8 ページ: 1973

    • DOI

      10.1038/s41467-017-02076-0.

    • 査読あり
  • [学会発表] Extracellular Behaviors of Wnt Ligands in Xenopus Embryo2018

    • 著者名/発表者名
      Yusuke Mii
    • 学会等名
      Amphibian development, regeneration, evolution and beyond
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Oligomerization-based assembly restricts Wnt protein diffusion2017

    • 著者名/発表者名
      Shinji Takada
    • 学会等名
      Gordon conference Wnt signaling 2017
    • 国際学会
  • [学会発表] Wnt signal modulates proliferation of spinal cord ependymal cells by promoting morphological change of the source cells2017

    • 著者名/発表者名
      Takuma Shinozuka, Ritsuko Takada, Shinji Takada
    • 学会等名
      18th International Congress of Developmental Biology
    • 国際学会
  • [学会発表] Oligomerization-based assembly restricts Wnt protein diffusion2017

    • 著者名/発表者名
      Shinji Takada
    • 学会等名
      ConBIo 2017
    • 招待講演
  • [学会発表] Restricted diffusion of Wnt proteins2017

    • 著者名/発表者名
      高田慎治
    • 学会等名
      Wnt研究会2017
    • 招待講演
  • [学会発表] ツメガエル初期胚での分泌性シグナル蛋白質Wntの挙動を理解する2017

    • 著者名/発表者名
      三井 優輔
    • 学会等名
      第9回イメージング若手の会 光塾
    • 招待講演
  • [学会発表] Wnt signal is required for proper rearrangement and morphological change of roof plate cells in the formation of median septum of mouse spinal cord2017

    • 著者名/発表者名
      Takuma Shinozuka, Ritsuko Takada, Shinji Takada
    • 学会等名
      50th Annual Meeting of the Japanese Society of Developmental Biologists
  • [学会発表] Wnt産生細胞の伸長はWntシグナルの場を変化させる2017

    • 著者名/発表者名
      篠塚琢磨, 高田律子, 高田慎治
    • 学会等名
      日本動物学会第88回大会
  • [備考] シグナル分子(モルフォゲン)の足場となる点状構造の発見とその役割の解明

    • URL

      http://www.nibb.ac.jp/press/2017/12/07.html

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公開日: 2018-12-17  

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