研究課題
H29年度は、題材とする原生生物種が、メタン菌の細胞内共生の有無によって実際には2種に識別可能であることを、細胞形態の一貫した相違と原生生物18S rRNA配列の分子系統学的解析により証明することができた。H30年度は、まずオーストラリアで宿主シロアリのサンプリングを行った。メタン菌保有タイプの同原生生物は、飼育下1週間程で速やかに消失してしまうため、新鮮な試料を得ることが必要であった。この現象自体が非常に興味深いが、もしかすると宿主シロアリが飼育下では巣内よりも高い酸素分圧に晒されることと関係するのかもしれない。前年度に引き続いて、1細胞転写産物解析の条件最適化を試み、現在解析中である。また、メタン菌共生タイプと非共生タイプの大きな相違であるメタン菌自身の機能を解明するため、細胞内共生微生物叢のメタゲノム解析を行い、同メタン菌の高完成度のドラフトゲノムの情報解析を実施した。その結果、ゲノムサイズは近縁の自由生活型系統とほとんど変わらず、メタン生成経路も含めて、代謝系にも大きな差異は見られなかった。このことは、本課題の仮説のとおり、比較的最近に細胞内共生が生じ、それによって種分化を引き起こしたことを支持している。また、同メタン菌と同時共生しているEndomicrobium属細菌のドラフトゲノム解析も実施した結果、近縁の同属細菌系統とは、水素代謝系に大きな相違があった。これは、同メタン菌の共生が、他の共生細菌も含めた宿主の生理に大きな影響を与えたことを示唆している。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 6件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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