研究課題
本研究の目的は、ショウジョウバエ(ハエ目、ショウジョウバエ科の昆虫)の体表(腹部、翅)にあるメラニン色素による着色、模様に関して、その存在意義(適応的意義)を明らかにすることにある。本研究をきっかけのひとつとして、より多くの生物の模様の意味が明らかになると期待している。ミズタマショウジョウバエ (Drosophila guttifera) は、翅と腹部にメラニン色素による黒い水玉模様を持つ。この模様の機能は、全く分かっていない。ミズタマショウジョウバエには確立された系統資源がほとんどないため、実験を遂行するにあたり、ゲノム編集により翅の水玉模様を薄くした系統を用いることを考えた。まずミズタマショウジョウバエの模様に関与していると推定される遺伝子をゲノム編集によりノックアウトした系統の樹立を試みた。メラニン合成に関与することが知られる二つの遺伝子について、エクソンの主要部分を欠くかフレームシフトを起こした系統の樹立に成功した。翅の模様の着色の程度を画像解析により定量化し、ノックアウト系統間での比較を行った。ゲノム編集された領域の周辺の塩基配列を詳細に調べ、どのような仕組みで遺伝子の機能が損なわれているのか評価した。ミズタマショウジョウバエの翅の模様の機能として考えられる仮説を整理し、配偶者選択における機能を実験によって検証した。翅を切り落とした個体、模様を持たない別種の翅に付け替えた個体、ゲノム編集により模様を薄くした翅に付け替えた個体、突然変異により模様の一部要素を欠く翅に付け替えた個体、黒く塗りつぶした翅に付け替えた個体等を用いて、交配実験を行った。その結果、雌雄ともに配偶相手の翅の有無は交配相手の選択に影響した。雌による配偶相手の選択において、雄がどの種の翅を持つかは影響したが、それ以外の要素は影響しなかった。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
Development, Growth & Differentiation
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巻: - ページ: -
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昆虫と自然
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