アキアズミーは、異形性染色体を持つ方の性で減数分裂組換えが全面的に抑制される現象で、性染色体が常染色体から進化する過程で必要な減数分裂組換え抑制のための一つのメカニズムと考えられている。本研究では、雄で減数分裂組換えが起こらないアカショウジョウバエと、その姉妹種で雄でも減数分裂組換えが起きるテングショウジョウバエを交雑し、両種のゲノムをいろいろな組み合わせで持つ雑種を作製し、減数分裂組換えの有無を調べた。また、雑種形成における染色体の遺伝様式を調べることによって、アキアズミーの遺伝基盤を解明することを目的とした。 アカショウジョウバエ、テングショウジョウバエそれぞれ2系統の間で交配し、十分な個体数が得られた4通りの交配の雑種第1代(F1)の♂について組換えの有無を戻し交配第1代(BC1)の遺伝子型の塩基配列レベルで検証した。その結果、第2染色体、第3染色体(アカショウジョウバエでは性染色体と融合したネオ性染色体)いずれにおいても、雄組換えは検出されなかった。この結果は、Fluidigm Access Array 48/48とIllumina MiSeq DNAシーケンサーを用いた19個体22マーカー遺伝子から得られた結果でも確認された。一方、F1♀では両染色体で組換えが検出された。これらの結果から、アカショウジョウバエには雄組換えを抑制する仕組みがあり、F1ではそれが優性形質として発現したと考えられた。 2種のF1をアカショウジョウバエの♀に戻し交配した結果、得られたBC1個体の♀には交配様式からは期待されないホモ接合型の個体が高頻度で観察された。そこで、得られたBC1♀個体についてY染色体特異配列を増幅するPCRを行った結果、それらは全てY染色体を持つことが分かった。すなわち、これらの♀個体はXXY型で、F1♂の減数分裂時には性染色体不分離が高頻度で生じることが分かった。
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