研究課題/領域番号 |
17K19431
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
小杉 真貴子 中央大学, 理工学部, 助教 (00612326)
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研究分担者 |
原 光二郎 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (10325938)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 光合成 / 南極 / 環境ストレス応答 / 適応戦略 / 気生藻 / 乾燥耐性 |
研究実績の概要 |
本研究は、南極の陸上環境に大きな群落を形成する気生緑藻ナンキョクカワノリの新規光応答システムに関して、その生理学的特性と生態学的な有用性を明らかにすることを目的としている。ナンキョクカワノリの生育環境を明らかにするため、生育地に無人微気象観測装置(AWS)を設置した。観測項目は、群落周辺の地表面付近の温度、湿度、光量子密度、紫外線強度、4波長分光測定、群落内部の温度である。現地での作業は、第60次日本南極地域観測隊に同行し、2018年12月から1月にかけて東南極地域のラングホブデにて設置作業を行った。設置は無事完了したが、衛星データ通信にトラブルが生じたためデータ取得の方法を変更する必要があった。 生理学実験手法を用いた解析では、基礎生物学研究所の大型スペクトログラフを利用し長波長光利用タンパク質(成分710)の発現誘導に関わる波長の解析を行った。クロロフィル蛍光分光測定とウエスタンブロッティングによる抗体反応により発現量の変動を調べたところ、700 nmより長波長で発現の増加が確認された。一方で、400 nmより短波長の光でも一時的な成分710の増加が示唆された。また、先進ゲノム支援による援助を受けて、ナンキョクカワノリの全ゲノム情報取得を目指した解析を開始した。培養株はバクテリアのコンタミが見られたため、抗生物質や多種類の培地条件を組み合わせてコンタミの除去を行った。ロングリードシーケンスを行うためDNA抽出法を検討し、現在シーケンスを進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度に予定していた生育微気象観測装置の設置は無事行うことができ、全ての観測項目でデータが蓄積されていることを確認した。ただし、衛星データ通信機器にトラブルがありリアルタイムのデータ取得を行うことができないため、今後のデータ解析に遅れが生じる見込みである。生理学実験においては、成分710の生理学的機能が明らかとなり、発現条件も明らかになりつつある。今後、ゲノム情報と通年の生育微気象データが取得されることで、成分710の生育環境下での発現機構について解析が可能になる。
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今後の研究の推進方策 |
南極の生育地に設置した自動微気象観測装置のデータ回収とメンテナンスを2020年1月に行う。南極での作業は第61次日本南極地域観測隊に依頼する。微気象観測データを解析し、生育環境における温度湿度条件と光質および光量の年変動と日変動を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議参加のための旅費を計上していたが、中央大学内の国際会議旅費助成を獲得することができたため次年度使用額に正の差額が生じた。差額は本研究課題の一部であるタンパク質解析のための消耗品と分析費用として使用する。
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