研究課題/領域番号 |
17K19432
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
高務 淳 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (80399378)
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研究分担者 |
仲井 まどか 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (60302907)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | ウイルス / 多様性 / 昆虫 |
研究実績の概要 |
トランスポゾンは、生物の多様性創出に重要な役割を担っている。トランスポゾンpolintonは、ウイルスの証であるカプシドと呼ばれる遺伝子を持ち、ウイルス (polintovirus)とも言える。Polintonは、遊離のpolintovirusが宿主ゲノムに入り込んだものと考えられているが、不明な点も多い。我々は、昆虫ポックスウイルス(EPV)と共に複製しているpolinton様エレメントを発見した。昆虫ウイルスからの同種のエレメントの探索・発見、polintonやvirophage等の関連するエレメントとの進化的関係の解明、本エレメントーウイルスー宿主昆虫の相互作用の解明を通じて、polintonの起源やゲノムに入り込んだ生態的要因の解明に寄与すること、本エレメントがウイルスや昆虫の多様性創出へ果たす役割を明らかにすることを目的とする。本年度は、エレメントの探索と、相互作用解析のためのエレメントを保持しないウイルスの分離を計画した。 新たにコスジオビハマキEPVにもエレメントが存在することを発見した。また、チャノコカクモンハマキEPVには、エレメント2本の存在が分かっていたが、エレメントを1本しか持たない株も発見した。また、ウイルスやpolinton、virophage等との関係を解析した。本エレメントは、polintonが持つ遺伝子群を持ち、polintonに酷似しているが、少し異なる特徴もあった。本エレメントは、多様なpolinton(polintovirus)の中から進化した可能性が考えられ、既知のエレメントの中では最もpolintonに近いことが示唆された。また、本エレメントが昆虫ウイルスへ遺伝子を伝播し、その多様性と進化に影響を及ぼしてきた可能性も推定された。 エレメントを保持しないウイルスを得るために、培養細胞を準備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昆虫に感染するウイルスから、新たにエレメントを発見した成果は認められると考えるが、当初計画では、新たに発見したエレメントは、全塩基配列を決定することになっていた。しかし、次世代シーケンサーを用いて全塩基配列を決定するために必要な品質の核酸を準備するなど、シーケンス前の前処理に時間を要し、次世代シーケンサーによる受託解析を行うには至らなかった。また、培養細胞を準備するまでに時間を要したため、エレメントを保持しないウイルスを年度内に得ることができなかった。これらのことから、進捗状況としては、やや遅れていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
新たに発見したエレメントについては、全塩基配列を決定するために次世代シーケンサーによる受託解析を行う(現在、受託解析中)。また、培養細胞を準備できたことから、目的とするエレメントを持たないウイルスの単離が可能であると考えている。また、宿主昆虫であるチャノコカクモンハマキのゲノムを解析中で、エレメントの昆虫宿主からの探索を開始している。今後は、新たなエレメントを探索するとともに、当初計画にあるように、エレメントーウイルスー宿主の相互作用の解析と、昆虫ゲノムからのエレメントの探索を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新たに発見したエレメントの全塩基配列解析のため、次世代シーケンス受託解析を発注する予定であったが、予想以上にシーケンスのための前処理に時間を要したため、次年度に受託解析を行い、使用するものとした。30年度分として請求した助成金と合わせ、年度計画に則して使用する。現在、すでに受託解析を行っており、適切な使用を行っている。
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