本研究の目的は、行動中のマウス脳からの蛍光イメージングにおいて3次元的に画像を取得する方法の開発である。脳組織は透明度が低いため、脳の外部からでは脳表から数百マイクロメートル程度の深さまでしか観察できない。そこで脳深部のイメージングでは脳に内視鏡を挿入してイメージングが行われる。しかし組織への侵襲性の観点から脳深部に挿入する内視鏡の直径には制限があり、おおむね0.5mm程度に制限される。そのため観察できる細胞数は数十個程度と少ない。内視鏡の小さな視野から最大限の神経細胞を観察するためには3次元的にイメージングすることが有効である。 そこで本研究では、可変焦点レンズを用いて3次元画像を得る方法を検討した。マウス等の小動物の頭部に装着できる蛍光顕微鏡UCLA miniscopeを改造して3次元イメージング顕微鏡を製作した。可変焦点レンズは対物レンズと蛍光フィルターの間の光路に挿入し、画像取得と同期して焦点を変化させられるようにした。この試作顕微鏡は1200×800×400マイクロメートルの領域から752×480×12 ボクセルの3次元画像を毎秒5回取得することができる。これは神経細胞のカルシウムイメージングを行うに十分な速度であるが、必要に応じてZ方向の解像度を減らし、その分画像取得速度を上げることもできる。装置全体の重量は約4gであり、マウスの頭部に装着して自由に行動させることができた。実際に試作顕微鏡をマウスに装着して海馬CA1領域から3次元カルシウムイメージングを行い、得られた画像データからPCAおよびICAを用いてニューロンの活動波形とニューロンの3次元分布を抽出した。 本年度は光学系の最適化と各部の軽量化を行った。さらに海馬CA1領域に加え、直径1mmのGRINレンズを介して前頭前皮質からの記録も行い、同様に3次元イメージングが可能であることを確認した。
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