研究課題/領域番号 |
17K19437
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
石塚 徹 東北大学, 生命科学研究科, 講師 (10344714)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / オプトジェネティクス / 光駆動プロトンポンプ / 微生物型ロドプシン / ターゲティングシグナル |
研究実績の概要 |
ミトコンドリアは,シナプス可塑性,シナプス形成,軸索刈り込み,アポトーシス,ニューロン・グリア変性疾患など様々な生理機能や病態機序に関わっているオルガネラである。本研究課題では,ミトコンドリアからのプロトンやカルシウムイオン流出入,ミトコンドリア膜電位,ATP産生を時空間分解能に優れた光で制御し,その効果や影響を解析する新たな研究を展開するための技術基盤の構築を目指す。本年度の研究では,7回膜貫通光駆動プロトンポンプであるArchTを,ミトコンドリアに局在化させる新規ミトコンドリアターゲティングシグナル(仮にMitoXシグナルと呼ぶ)を同定することができた。MitoXシグナルを付加したArchTやその他タンパク質を培養細胞に発現させるための発現プラスミドを作製し,培養細胞に遺伝子導入,組み換えタンパク質を発現させた後にその局在を免疫染色法で同定した。ミトコンドリアマーカーとして知られているミトコンドリア外膜タンパク質TOMM22や,ミトコンドリアATP合成酵素のサブユニットのひとつであるATP5A1を特異的に認識する抗体で得られた免疫組織画像と比較した結果,組換えタンパク質発現細胞の同定を容易にするために蛍光タンパク質(EYFP)を付加した組換えタンパク質では,ミトコンドリアへの局在が阻害されることがわかった。一方,蛍光タンパク質をペプチドタグのひとつであるFLAGタグに置き換えると,効率良くミトコンドリアに局在した。これらの結果から,本研究の遂行に最適な発現プラスミドの基本構成が固まり,次年度においてこの分子ツールの機能解析・評価実験に専念することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究において,本研究の遂行上もっとも重要である7回膜貫通光駆動プロトンポンプをミトコンドリアに局在化させる新規シグナルの同定に成功した。この成果により,候補ツールの機能解析に最適な発現プラスミドの基本構成を固めることができた。平成30年度では,まずこの発現プラスミドの構築から取り掛かり,機能解析・評価実験に取り組むことが可能である。このことから,当初の計画通り「ほぼ順調に進展している」と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画の最大の難所である光駆動プロトンポンプのミトコンドリアターゲティングを実現させる新規ミトコンドリアターゲティングシグナルの同定に成功したことから,平成30年度の研究では,当初の研究計画通りこの分子ツールの機能解析・評価研究に遅滞なく取り組むことが可能である。
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次年度使用額が生じた理由 |
交付内定が平成29年6月30日であったため,当初計画より使用額に差が生じた。また,研究計画において,平成29年度は探索的な実験が多くなることを予想していたが,想定以上に早く目標に到達することができたため,この実験で見込んでいた消耗品費が計画より少なく済んだことも影響した。 平成30年度は,候補ツールの機能解析・評価実験を鋭意遂行するために使用する予定である。一方,平成30年度前半に研究室の大幅な改装・移設作業が予定されており,その間研究を断続的に停止せざるを得ない状況になることが予想させる。場合によっては補助事業期間の延長も考えておく必要があり,その場合には差額が生じた予算を充当する。
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