研究課題/領域番号 |
17K19441
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
池谷 裕二 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (10302613)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 海馬 / 細胞外マトリックス / CA2 / 発現 / 発達 / 分布 / マーカー |
研究実績の概要 |
海馬CA2野は、海馬の他の領域に比べ近年になって研究が進んできた領域である。海馬の中でも独特の機能を示すことが知られており、可塑性が低いことは特徴的な性質の一つである。本研究では、この可塑性の低さの一因であるとされるペリニューロナルネットに着目した。ペリニューロナルネットは、PV陽性インターニューロンなどの抑制性ニューロンの周りに存在し、可塑性を抑える働きをすることが知られている。近年の研究では、ペリニューロナルネットは、海馬CA2野においては興奮性の錐体細胞の周りにも存在し、その興奮性及び可塑性を抑える働きも持っていることが明らかにされた。しかしながら発達期における海馬CA2野でのペリニューロナルネットの形成は未だ十分には解明されていない。そこで本研究では、海馬CA2野において、発達に伴うペリニューロナルネットの形成を調べることを目的とし、構成成分であるaggrecanをマーカーとして免疫染色を行った。その結果、aggrecan陽性ペリニューロナルネットは、RGS14(マーカータンパク質)陽性のCA2野が形成する以前に形成を始め、CA2野になるであろう領域を示していることが分った。さらに、anterior-posterior軸に沿った分布を調べることで、海馬CA2野におけるaggrecan陽性ペリニューロナルネットはanterior側で、より明瞭に観察されることが明らかになった。これらの結果より、海馬CA2野は、現在マーカーとして用いられているタンパク質の発現やCA2錐体細胞の形成以前にaggrecan陽性ペリニューロナルネットによって形成され始めていると考えられる。また、anterior-posterior軸に沿った分布の違いに応じたCA2錐体細胞の性質や、ペリニューロナルネットのCA2錐体細胞に対する作用の違いを始めとした、機能の解明につながることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りに実験を遂行し、なおかつCA2野のマーカーについて検討結果は、2017年度中に学術論文として発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
パッチクランプ記録による膜電位の観察に加え、末梢のリズムとして心電図も同時に記録し、膜電位振動を抹消リズムの関係を記述する。さらに中枢の操作の一環として、感覚刺激(嗅覚)によりCA2の局所回路の変調を促す。これによりCA2野の活動がどのように外界の情報をコードしうるかを検討する。
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