各々の動物は、外界からの刺激を脳内で情報処理し、記憶形成、物質の認識、及び意思決定がなされるが、脳内情報処機構は全ての動物に共通なメカニズムと各々の動物によって特徴的なメカニズムとがある。今回は、マカクザルの大脳の視覚野におい遺伝子を背景とした構造解析を行うことで、霊長類の大脳皮質内での階級的な情報処理機構を知る手掛かりとした。 実験方法は、マカクザルの第1視覚野(V1)において、層・細胞種特異的に発現する遺伝子を同定することを目的にCAGE libraryの作製を行った。行程としては、1)V1および比較対象とする前頭葉の脳スライスの作製、2)カウンター染色による細胞の形態の確認、3)V1および比較対象とする前頭葉の全層、あるいは、V1の各々の層から細胞を採取しレーザーカッターによって細胞を採取、4)mRNAの抽出、5)CAGE libraryの作製、 の5段階に分け、より信頼できる結果を得るために、大脳皮質の構造を明瞭化し、mRNA・cDNAを破壊や損失を最小限に減らし、効率よく抽出し精製していく条件設定を行った。結果、前頭葉及びV1の各々の全層からなるCAGE Libraryから比較可能なSolidなデータを得ることができ、これらのデータを元に、層毎に採取された細胞から作製されたのCAGE libraryを比較検討するという段階まで進展することが出来た。今後は更に、このようにして得られた研究成果を元に、視覚野において層あるいは細胞種特異的に発現する遺伝子の同定へと研究を進めたいと考えている。 その他、マカクザルの飼育・管理、生理学実験、および行動実験を経験することが出来た。これらの研究成果、および経験は、今後のにマカクザルにおける視覚の研究を進めて為に有用な成果であると考えられる。
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