研究課題/領域番号 |
17K19448
|
研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
清野 泰 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 教授 (50305603)
|
研究分担者 |
久米 恭 公益財団法人若狭湾エネルギー研究センター, 研究開発部, 室長 (50359238)
小野 正博 京都大学, 薬学研究科, 教授 (80336180)
|
研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
|
キーワード | Aβ凝集体 / 粒子線 / オージェ電子 / 内照射治療 |
研究実績の概要 |
本研究は、アルツハイマー病(AD)に対する粒子線・オージェ電子コンビネーション治療を開発することを目的とする。急速な高齢化に伴い、ADをはじめとする痴呆性疾患の増加が社会問題のひとつになっている。AD発症までの最も初期段階の特徴的な脳病変として、老人斑の沈着が知られている。この老人斑の主要な構成成分であるアミロイド蛋白(Aβ凝集体)凝集体をイメージングするポジトロン断層撮像法(PET)プローブが開発され、早期発見が可能な時代になってきている。しかし、治療に関しては未だ有効な治療法が確立していないのが現状である。そこで、Aβ凝集体に放射線を照射して凝集体を分解することにより、これまでに試みられたことのない全く新しいADの治療法が開発出来るのではと考えた。Aβ凝集体を放射線により分解するためには、物質との相互作用の大きな放射線が適していると予測されるため、粒子線(陽子線や炭素線)とオージェ電子が適していると考え、ADに対する粒子線・オージェ電子コンビネーション治療を開発するという着想に至った。 本年度はAβ凝集体に100 Gyの陽子線および炭素線を照射した後に、チオフラビンT法により、その凝集具合を測定した。しかし、どちらの粒子線に関しても照射を行っていないコントロール群に比べ有意な変化を見いだすことができなかった。しかし蛍光スペクトラムを確認すると、部分的に分解している可能性も否定することができない結果であった。この結果は、粒子線照射によりAβ凝集体の分解ができていない可能性を示しているが、チオフラビンT法が部分的に分解されたAβ凝集体にも結合している可能性もあるために、チオフラビンT法以外での観察が必要なことも示している。そこで、次年度は電子顕微鏡を用いて、粒子線照射後のAβ凝集体の形態の観察を行うこととする。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に粒子線照射施設における加速器のトラブルにより、粒子線照射が行えなかったために、予定よりも進捗が遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度に予定していた実験は、加速器のトラブルが解決した平成30年度に行うことができた。しかし、予想していたAβ凝集体の分解はチオフラビンT法では観察されなかった。このことは本当に分解されていない可能性と測定方法が適していない可能性が含まれているので、新しい測定方法を導入して確認する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は加速器のトラブルにより1年間粒子線照射が行えなかったために予定した予算を使用できなかった。平成30年度は加速器のトラブルが解決したので平成29年度に予定していた照射実験を行ったが、初年度の遅れを取り戻すほどは照射できなかった。そこで研究期間を1年延長して令和元年度に使用する予定である。
|