研究課題
AAVについては、様々な血清型(serotype)が現在までに報告されている。その中でも 2型(AAV2)の研究が最も進んでおり、多くの分野でウイルスベクターとして利用されてきた。野生型AAVのゲノムは、ITR(inverted terminal repeat)・Rep(replication protein)・Cap(capsid protein)からなる。ゲノム上からRep・Cap遺伝子を取り除き、そこへ任意の配列を挿入することで組換えAAVを得る。ウイルス粒子を作成する際、ゲノムから取り除いたRep・Cap遺伝子を、別のプラスミドから補充することが必要である。この際、異なる血清型のCap遺伝子を補充する技術が確立されている。例えば1型のCap遺伝子を補充することで、ゲノム構造は2型でキャプシド構造は1型というハイブリッドウイルスベクター粒子(AAV2/1)を作成することができる。本研究課題では、感染成立に関する詳細な解析がなされている「2型のCap遺伝子」に対し、遺伝子改変操作を行う(pAAV2-RepCap)。平成29年度は、1) キャプシドをコードするヘルパープラスミドの作成・検証:遺伝子合成によりヘルパープラスミドを作成し、様々なキャプシドを用いたハイブリッドウイルスベクター粒子(AAV2/X)を作成し、感染性を検証した。脳部位や神経細胞種によって導入効率が大きく変わることが分かり、まずは目的に応じたキャプシド選択を行うことが重要であることが分かった。2) 非特異的感染性の除去:ウイルス粒子表面から外に突き出しているspikeのアミノ酸を置換し、感染能の除去を進めた。in vitroで検証実験を行ったところ、感染性は10^2~3程度減少することが分かった。さらなるアミノ酸置換、そしてin vivoでの検証を進める必要がある。
2: おおむね順調に進展している
特に大きな問題も生じず、順調に進んでいる。
1) ハイブリッドウイルスベクター粒子(AAV2/X)の検証感染指向性をin vivoで検証し、各研究機関への提供を積極的に展開する。2) 新規感染性の付与新しい配列をキャプシドタンパクに導入することで、ウイルス粒子の立体構造に障害を来たし、ウイルス粒子の産生自体に問題が生じる可能性が考えられる。よって、標的毎に異なる配列をその都度導入し、最適化を図ることは汎用性という観点からも不利な戦略となる。in vitroでウイルス粒子の産生、および感染性を効率的に検証するassay系を確立し、in vivoへの応用を目指す。
理由:in vivo assayで本格的に検討する前に、in vitro assayで費用と労力の軽減を図った。使用計画:in vivo assayに向け、必要量のウイルス粒子を作製・精製する。
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すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
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